獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「そうかい。言いたくないのなら、いいよ」


困惑の表情を浮かべるアメリを気遣うように、エイダンが言う。


「あんたが言いたくないのなら、よほどのことなんだろ。私は、あんたのことが好きだからね。あんたのこと、信じるよ」


「エイダン……」


「私だけじゃないよ。この町の人間は、皆あんたが好きだ。あんたがこの町に来てミハエル爺さんのガラス作りを手伝うようになってから、皆よく笑うようになった。こんなご時世なのにさ。だから、感謝してるんだ」


エイダンの思いがけない言葉に、アメリはきょとんとする。そんなアメリを見て、エイダンは丸々とした顔に優しい笑みを浮かべた。


「まあ、ちょっと痩せすぎだと思うがね。もっとしっかり食べなきゃ、いいダンナを捕まえられないよ。さ、早くミハエル爺さんのところに行ってきな！」


エイダンに文字通り尻をバシンと叩かれ、アメリは送り出された。


（エイダン、力強すぎ……）


お尻は痛いけど、心は温かかった。カイルに冷たくされたことで沈んでいた気持ちが、少し晴れやかになる。


（くよくよしてても仕方ないわ。今日も、頑張らなくては）


そう思い直し笑顔を作ると、心の中でエイダンに感謝しながら、アメリは夏の陽気の中を駆けて行った。

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