獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
――バシッ!
鈍い音がして、アメリはハッとした。鎧兜の偽物が、泣きじゃくる六歳くらいの少年の頬を手ではたいたのだ。
真っ赤に腫れた頬を手でおさえると、少年は火がついたようにより一層大声で泣き喚いた。
「今日のところはこれで許してやる。今度同じことをしたら、首をはねるからな」
人を小馬鹿にするような低い声が、鎧兜の向こうから聞こえた。
父親は嗚咽を漏らす息子を掻き抱き、悔しそうに震えながら鎧兜の男を睨んでいる。
「あれはひどい。噂通りの悪魔だ」
「最低の人でなしだな。あんな男が王位を継ぐと思うと、ぞっとする」
嫌悪感丸出しのカイルへの非難の声が、あちらこちらで上がる。
(違う、違うわ……!)
カイルは、確かに横暴だ。訓練中に騎士達に厳しくしたり、従者に冷たく当たったりする姿を何度も見たことがある。
だが、彼は子供には決して手を上げなかった。大人に手を上げる時だって、度は超えているかもしれないが判然たる理由があった。弱き者に対しての理不尽な暴力は、絶対に振るわない。
(噂の原因は、あの偽物だったのね……)
あの鎧兜の偽物は、カイルが常日頃から鎧兜を被っているのを利用して、こうやって町で悪行を繰り返してきたのだろう。
悔しくて、アメリはどうにかなりそうだった。
鈍い音がして、アメリはハッとした。鎧兜の偽物が、泣きじゃくる六歳くらいの少年の頬を手ではたいたのだ。
真っ赤に腫れた頬を手でおさえると、少年は火がついたようにより一層大声で泣き喚いた。
「今日のところはこれで許してやる。今度同じことをしたら、首をはねるからな」
人を小馬鹿にするような低い声が、鎧兜の向こうから聞こえた。
父親は嗚咽を漏らす息子を掻き抱き、悔しそうに震えながら鎧兜の男を睨んでいる。
「あれはひどい。噂通りの悪魔だ」
「最低の人でなしだな。あんな男が王位を継ぐと思うと、ぞっとする」
嫌悪感丸出しのカイルへの非難の声が、あちらこちらで上がる。
(違う、違うわ……!)
カイルは、確かに横暴だ。訓練中に騎士達に厳しくしたり、従者に冷たく当たったりする姿を何度も見たことがある。
だが、彼は子供には決して手を上げなかった。大人に手を上げる時だって、度は超えているかもしれないが判然たる理由があった。弱き者に対しての理不尽な暴力は、絶対に振るわない。
(噂の原因は、あの偽物だったのね……)
あの鎧兜の偽物は、カイルが常日頃から鎧兜を被っているのを利用して、こうやって町で悪行を繰り返してきたのだろう。
悔しくて、アメリはどうにかなりそうだった。