獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
騒然とする町の人達を満足げに眺め回すと、鎧兜の男は道端に停めていた馬にひらりと飛び乗り手綱を引いた。従者らしき服装をした男が二人、その後ろにつき従う。
事の成り行きを見守っていた群衆が怯えたようにぞろぞろと動き、彼に道を開けた。
今だ、と思ったアメリは、意を決して馬に跨る男の前に立ちふさがる。
「お待ちください」
「なんだ、お前は」
鎧兜の男が、忌々しげに手綱を引く。アメリは、エメラルドグリーンの瞳で顔の見えない男をきつく見据えた。
「カイル様のお名前を語るあなたは、どなたですか?」
「は? 何を言っておる」
「あなたは、この国の王太子カイル・エリオン・アルバーン様ではございません」
鎧兜の男が、一瞬息を止めたのが気配で分かった。
途端に、群衆たちに動揺の波が広がる。
「どういうことだ?」
「あの女、正気か?」
「私は、カイル様の素顔を存じております。今すぐにその鎧兜を取って、正体をお見せください」
カイルが、アレクに見せた優しい眼差しを覚えている。そのカイルの名前を語って、子供に暴力を働くなど許せない。
一歩も譲らずにきつく男を睨むアメリを、鎧兜の男はしばらくの間じっと見つめていた。
「……ふざけるな。俺が、偽物だと?」
やがて聞こえてきたのは、怒り露わな声だった。
「女よ。この俺を侮辱したら、どうなるか分かって言っているのか?」
事の成り行きを見守っていた群衆が怯えたようにぞろぞろと動き、彼に道を開けた。
今だ、と思ったアメリは、意を決して馬に跨る男の前に立ちふさがる。
「お待ちください」
「なんだ、お前は」
鎧兜の男が、忌々しげに手綱を引く。アメリは、エメラルドグリーンの瞳で顔の見えない男をきつく見据えた。
「カイル様のお名前を語るあなたは、どなたですか?」
「は? 何を言っておる」
「あなたは、この国の王太子カイル・エリオン・アルバーン様ではございません」
鎧兜の男が、一瞬息を止めたのが気配で分かった。
途端に、群衆たちに動揺の波が広がる。
「どういうことだ?」
「あの女、正気か?」
「私は、カイル様の素顔を存じております。今すぐにその鎧兜を取って、正体をお見せください」
カイルが、アレクに見せた優しい眼差しを覚えている。そのカイルの名前を語って、子供に暴力を働くなど許せない。
一歩も譲らずにきつく男を睨むアメリを、鎧兜の男はしばらくの間じっと見つめていた。
「……ふざけるな。俺が、偽物だと?」
やがて聞こえてきたのは、怒り露わな声だった。
「女よ。この俺を侮辱したら、どうなるか分かって言っているのか?」