獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「何だ、あの態度は。いくら王太子と言えども、無礼すぎる」
王の間を出て従者の指示通りに居館に向かう道中、ヴァンはぶつぶつと不平を言っていた。
「ていうか、あの鎧兜はなんだよ。悪趣味にもほどがある。顔も見せられない醜男なのか?」
「ヴァン、ここは王宮よ。言葉をつつしみなさい」
「ですが、アメリ様。あれはひどすぎます。アメリ様は心が広いからそうして落ち着いておられますが、他の令嬢なら怒り狂っているところですよ」
「別に、心が広いわけではないわ。あれくらい、馴れているだけ」
淡々と吐き出されたアメリの言葉に、ヴァンは足の速度を緩めた。ヴァンの同情の眼差しを感じながら、アメリはかつての日々を思い起こす。
アメリの母は、ウィシュタット伯爵が旅先で見染めた愛人だった。アメリの母に入れあげたウィシュタット伯爵は、口実を作っては彼女のもとへと足げく通った。結果生まれたのが、アメリというわけだ。
平民だったアメリの母は、もちろん伯爵と結婚することは出来なかったし、彼女自身もそれを望んではいなかった。そのため伯爵からの援助を拒み、女手一つでアメリを育てた。だがアメリが十歳の時に他界し、アメリは第四令嬢として伯爵家に引き取られることになる。
三人の姉と伯爵の正妻は、突如現れた妾の娘を当然快くは思わなかった。執拗ないびりを毎日繰り返し、アメリを追い込もうとした。
アメリだけ粗末なドレスを着せられるのは当たり前だったし、「魔女」や「貧乏人」などと心無い言葉を日常的に浴びせた。まるでアメリがいないかのように、数日間無視をされることも度々あった。
水を浴びせられたり、持ち物を隠されたり、理不尽な噂を流されたり。挙げれば、数えきれないほどだ。
そんなアメリの唯一の味方は、ヴァンだった。もちろん、雇われている身であるヴァンは、面と向かってアメリを庇うことなどできない。けれどもヴァンの甘いマスクに翻弄されている姉たちは、彼の姿が見えるとアメリに対する態度を改めるのだった。
それを知ってか、ヴァンは暇を見つけてはアメリに顔を見せに来てくれていた。
王の間を出て従者の指示通りに居館に向かう道中、ヴァンはぶつぶつと不平を言っていた。
「ていうか、あの鎧兜はなんだよ。悪趣味にもほどがある。顔も見せられない醜男なのか?」
「ヴァン、ここは王宮よ。言葉をつつしみなさい」
「ですが、アメリ様。あれはひどすぎます。アメリ様は心が広いからそうして落ち着いておられますが、他の令嬢なら怒り狂っているところですよ」
「別に、心が広いわけではないわ。あれくらい、馴れているだけ」
淡々と吐き出されたアメリの言葉に、ヴァンは足の速度を緩めた。ヴァンの同情の眼差しを感じながら、アメリはかつての日々を思い起こす。
アメリの母は、ウィシュタット伯爵が旅先で見染めた愛人だった。アメリの母に入れあげたウィシュタット伯爵は、口実を作っては彼女のもとへと足げく通った。結果生まれたのが、アメリというわけだ。
平民だったアメリの母は、もちろん伯爵と結婚することは出来なかったし、彼女自身もそれを望んではいなかった。そのため伯爵からの援助を拒み、女手一つでアメリを育てた。だがアメリが十歳の時に他界し、アメリは第四令嬢として伯爵家に引き取られることになる。
三人の姉と伯爵の正妻は、突如現れた妾の娘を当然快くは思わなかった。執拗ないびりを毎日繰り返し、アメリを追い込もうとした。
アメリだけ粗末なドレスを着せられるのは当たり前だったし、「魔女」や「貧乏人」などと心無い言葉を日常的に浴びせた。まるでアメリがいないかのように、数日間無視をされることも度々あった。
水を浴びせられたり、持ち物を隠されたり、理不尽な噂を流されたり。挙げれば、数えきれないほどだ。
そんなアメリの唯一の味方は、ヴァンだった。もちろん、雇われている身であるヴァンは、面と向かってアメリを庇うことなどできない。けれどもヴァンの甘いマスクに翻弄されている姉たちは、彼の姿が見えるとアメリに対する態度を改めるのだった。
それを知ってか、ヴァンは暇を見つけてはアメリに顔を見せに来てくれていた。