獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
三年前、カイルがドーソンを殴ったのは事実だ。店先で縮こまるミハエルにドーソンが悪態を吐いている姿を見て、虫唾が走ったからだった。


町でやりたい放題だったドーソンは自分よりも力のあるカイルにねじ伏せられ、悔しそうに顔をひきつらせていた。


それ以降、ドーソンは以前のようにひどく権力を振りかざすことはなくなった。強欲なドーソンの不自然なほどの聞き分けの良さに、カイルは前々から違和感を感じていた。


偽物は、どうしてカイルのフリをしていたか。何が、目的なのか。





そういえば、とカイルは弾かれたように顔を上げる。


シルビエ広場を抜けたリエーヌの郊外に、確かドーソンの別荘があったはずだ。金色をふんだんに使った悪趣味な建物に、見覚えがある。


(もしや、あの時の報復のために俺の評判を下げようとしたのか。そして、偽者であることを見破った彼女を連れ去った)


カイルは手綱を引くと嘶く馬を方向転換させ、道の先を睨みつけた。


そして呆気にとられたままの町の人々をその場に残し、リエーヌの郊外に向けて勢いよく馬を走らせた。

< 116 / 197 >

この作品をシェア

pagetop