獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する



「うう……ん」


後頭部が、ズキズキと痛む。微かなうめき声を上げながら、アメリはどうにか瞼を押し上げた。


白く靄のかかった景色が、次第に鮮明になってくる。アメリは、見たこともない部屋のソファーの上に横になっていた。


金を基調とした悪趣味なその部屋は、ソファーだけでなくテーブルや飾り棚などもあり、一見して応接室のようだった。上空には丸い天窓があり、降り注ぐ光がごてごてと装飾された室内を余計にぎらつかせている。


(ここは……?)


カイルの偽物に捕らえられ馬に乗せられたところまでは覚えているが、それ以降の記憶が抜けている。


戸惑いつつも身を起こそうとしたところで、体に違和感を覚えた。手足の自由が効かない。両手首と両足を、縄で厳重に拘束されているのだ。





ぞっとしたところで、ドアが開く音がした。


続いて、コツコツと靴音を響かせながら小太りの男がこちらへと近づいてくる。金色のベストに金の刺繍の施された紫のロングジャケットを羽織ったその男に、アメリは見覚えがあった。


「ドーソン男爵……」


四角い顔に小さめの瞳。特徴的なその顔は、一度見たら忘れないだろう。彼は、紛れもなくミハエル老人が金を借りているドーソン男爵だった。


「目が覚めたようだね。心配したよ。弟が手荒な真似をしてすまなかった」


今の状況にそぐわない紳士的な態度で、ドーソン男爵は頭を垂れた。


「弟……?」


「ああ。背格好が近いからね、彼には時々鎧兜を被って、王太子のフリをしてもらっている」


悪びれた風もなく、ドーソン男爵はその悪行を暴露した。


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