獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「アメリ様、差し出がましいようですが……」
ヴァンが、足を止めた。アメリは振り返り、神妙な面持ちの彼を見上げる。
「あなたのことは、実の家族のように大切に思っています。俺には、あなたと同じ年の妹がいましたので」
アメリは、ヴァンの過去を詳しくは知らない。だが、彼の父親が爵位を剥奪されたのには、何か複雑な事情が絡んでいることは知っていた。そして、一家が離散した際、不慮の事故で妹が亡くなってしまったことも。
「だから、あなたには幸せになってもらいたいのです。ですから、我慢の限界が来た時は教えてください。俺が、あなたを悪魔のもとから逃がしてみせます」
「……ありがとう、ヴァン」
自分は幸せ者だと、アメリは思う。自分を大切に思ってくれる、頼もしい騎士が傍にいるのだから。
だが、アメリの母は天涯孤独の身だった。それでも弱音一つ吐かず、アメリに目いっぱいの愛情を注いでくれた。
母のことを思えば、今の状況など何てことないように思うのだ。
(お母様のように、強くならなければ)
アメリは前に向き直ると、母親譲りのエメラルドグリーンの瞳で、進む先を強く見据えた。
ヴァンが、足を止めた。アメリは振り返り、神妙な面持ちの彼を見上げる。
「あなたのことは、実の家族のように大切に思っています。俺には、あなたと同じ年の妹がいましたので」
アメリは、ヴァンの過去を詳しくは知らない。だが、彼の父親が爵位を剥奪されたのには、何か複雑な事情が絡んでいることは知っていた。そして、一家が離散した際、不慮の事故で妹が亡くなってしまったことも。
「だから、あなたには幸せになってもらいたいのです。ですから、我慢の限界が来た時は教えてください。俺が、あなたを悪魔のもとから逃がしてみせます」
「……ありがとう、ヴァン」
自分は幸せ者だと、アメリは思う。自分を大切に思ってくれる、頼もしい騎士が傍にいるのだから。
だが、アメリの母は天涯孤独の身だった。それでも弱音一つ吐かず、アメリに目いっぱいの愛情を注いでくれた。
母のことを思えば、今の状況など何てことないように思うのだ。
(お母様のように、強くならなければ)
アメリは前に向き直ると、母親譲りのエメラルドグリーンの瞳で、進む先を強く見据えた。