獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「おお、そうだった。手を縛られた状態では自分で刺すことも出来ないな。私が手伝ってやろう。だが、その前に少し楽しませてもらおうじゃないか」
ドーソン男爵が、無力なアメリを蔑むように微笑んだ。そして手にした短剣をドレスの胸もとに当てると、一気に引き下ろす。
ビリリッと布の裂ける音が静かな空間に響き渡り、胸の谷間が露わになる。
アメリはエメラルドグリーンの瞳を目いっぱい見開いて、自分の惨めな姿を見つめていた。
ゆっくりと胸を打ち付ける心臓の鼓動が、アメリの耳を支配する。脳裏に鮮明に蘇ったのは、この世の果てのような場所で、男たちに取り囲まれている無力な母の姿だった。
あまりの恐ろしさに涙がこみ上げ、悲鳴さえ上げることもできずガクガクと体が震えた。
その時だった。
――バンッ!
入り口のドアが、そんな物音とともに勢いよく蹴破られた。
同時に、剣を構えた三人の男が部屋になだれ込む。
アメリの涙に濡れた瞳は、瞬時にその男たちに釘付けになった。
獅子の紋章の縫い付けられた朱色の軍服に身を包んだ二人の騎士は、カールとブランだ。いつもは気さくな彼らが、今は見たこともないほどに神妙な面持ちでドーソン男爵を睨んでいる。
そしてその真ん中にいるのは、銀色に光る鎧兜を被った男だった。
「悪獅子……」
ドーソン男爵の後ろにいるガスパーが凄んだ声を出し、すかさず剣を構える。
「なぜここが分かった?」
「彼女を解放しろ。俺に扮した罰として、お前らは牢獄行きだ」
ガスパーの問いかけには答えず、鎧兜の男が低い声を出す。
アメリは、ハッと息を呑んだ。
(この声。もしかして……)
ドーソン男爵が、無力なアメリを蔑むように微笑んだ。そして手にした短剣をドレスの胸もとに当てると、一気に引き下ろす。
ビリリッと布の裂ける音が静かな空間に響き渡り、胸の谷間が露わになる。
アメリはエメラルドグリーンの瞳を目いっぱい見開いて、自分の惨めな姿を見つめていた。
ゆっくりと胸を打ち付ける心臓の鼓動が、アメリの耳を支配する。脳裏に鮮明に蘇ったのは、この世の果てのような場所で、男たちに取り囲まれている無力な母の姿だった。
あまりの恐ろしさに涙がこみ上げ、悲鳴さえ上げることもできずガクガクと体が震えた。
その時だった。
――バンッ!
入り口のドアが、そんな物音とともに勢いよく蹴破られた。
同時に、剣を構えた三人の男が部屋になだれ込む。
アメリの涙に濡れた瞳は、瞬時にその男たちに釘付けになった。
獅子の紋章の縫い付けられた朱色の軍服に身を包んだ二人の騎士は、カールとブランだ。いつもは気さくな彼らが、今は見たこともないほどに神妙な面持ちでドーソン男爵を睨んでいる。
そしてその真ん中にいるのは、銀色に光る鎧兜を被った男だった。
「悪獅子……」
ドーソン男爵の後ろにいるガスパーが凄んだ声を出し、すかさず剣を構える。
「なぜここが分かった?」
「彼女を解放しろ。俺に扮した罰として、お前らは牢獄行きだ」
ガスパーの問いかけには答えず、鎧兜の男が低い声を出す。
アメリは、ハッと息を呑んだ。
(この声。もしかして……)