獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
その刹那。
――――ガシャァァァァン!!!
上空から、天地がひっくり返ったかのような轟音が鳴り響いた。
同時に無数の光の粒が上空から降って来て、その中を、剣を携えた腕を顔の前で交差させた人影が落ちてくる。
アメリは吸い寄せられるように、その情景に見入っていた。
青空を映した月白色にキラキラと輝くガラスの粒の中で、金糸雀色の髪の毛が神々しく輝いている。
天窓を突き破り屋根から飛び降りてきたのは、カイルだった。
カイルはガラスの破片と共に器用に床に着地すると、呆気に取られるあまりアメリの喉元から短剣を離していたドーソン男爵の胸倉を掴んだ。
そして、勢いよく床に投げつける。
「ひぃぃっ!」
ガラスの破片が背中に刺さり苦痛の声を上げるドーソン男爵の胸に、カイルは容赦なく強烈な蹴りを入れた。
その隙に、鎧兜を頭から剥がしたヴァンが、素早い身のこなしでガスパーの剣を蹴り落とす。ガスパーの背後に同時に回り込んだカールとブランが、身動きが取れないように彼の腕を締め上げた。
「ううう……」
繰り返しカイルに胸を踏まれドーソン男爵が息も絶え絶えになった頃、カイルはようやくソファーに倒れ込んでいるアメリを振り返った。そして、胸もとを大きく引き裂かれた彼女の姿を目にする。
瞬間、天色の瞳に猛々しい怒りが宿るのをアメリは見た。まるで狼のように金糸雀色の髪が総気立ち、全身に殺気が漲る。
「今すぐに、殺してやる」
カイルはぞっとする声音で言い捨てると、腰から剣を引き抜き、迷いなく床に転がるドーソン男爵を伐ろうとした。