獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
第六章 出陣前夜の誓い
◇
馬車着き場で御者に馬を引き渡すと、カイルはアメリを抱えたまま城の中に入って行った。
侍女に王の近従、小姓に衛兵、料理人に庭師。回廊を行き交う者たちは、皆立ち止まり二人をポカンと見つめていた。
「あの、もう一人で歩けますので」
人々の視線を感じ羞恥心の込み上げてきたアメリがそう言っても、カイルはアメリを降ろそうとはしなかった。
連れて行かれたのは、居館の最上階にある豪華な一室だった。
部屋いっぱいに藍色の絨毯が敷き詰められ、天蓋付きのベッドやテーブルなどの家具が悠々と置かれている。石壁にはアーチ形の窓が等間隔に並び、室内は穏やかな光に照らされていた。
カイルは乳白色のカバーのかかったベッドにアメリをそっと降ろすと「人を呼ぶから、風呂に入れ」と言い残し、アメリの顔を見ないままに部屋から出て行った。
今更のようなカイルの素っ気なさに唖然としつつも、アメリは前ほど動揺はしなかった。
燃えるようなキスに、アメリの体を抱きしめる腕の温もり。それだけで、充分だった。言葉にはされなくとも、素っ気ない態度でも、カイルはきっと自分を必要としてくれている。
間もなくして侍女たちがバスタブを室内に運び込み、お湯を注いでくれた。アメリは用意された沐浴用のガウンに身を包み、体を清める。
婚約者といえども今までは侍女のような暮らしぶりだったので、あれこれと手助けされるのは違和感があった。
「自分で出来るから大丈夫です」
やんわりと介添えを断れば、侍女たちは困惑の表情を浮かべた。
入浴が終わり用意された真珠色のドレスに袖を通した頃には、色々なことが一度に起こり過ぎて興奮気味だった気持ちもすっかり落ち着いていた。
馬車着き場で御者に馬を引き渡すと、カイルはアメリを抱えたまま城の中に入って行った。
侍女に王の近従、小姓に衛兵、料理人に庭師。回廊を行き交う者たちは、皆立ち止まり二人をポカンと見つめていた。
「あの、もう一人で歩けますので」
人々の視線を感じ羞恥心の込み上げてきたアメリがそう言っても、カイルはアメリを降ろそうとはしなかった。
連れて行かれたのは、居館の最上階にある豪華な一室だった。
部屋いっぱいに藍色の絨毯が敷き詰められ、天蓋付きのベッドやテーブルなどの家具が悠々と置かれている。石壁にはアーチ形の窓が等間隔に並び、室内は穏やかな光に照らされていた。
カイルは乳白色のカバーのかかったベッドにアメリをそっと降ろすと「人を呼ぶから、風呂に入れ」と言い残し、アメリの顔を見ないままに部屋から出て行った。
今更のようなカイルの素っ気なさに唖然としつつも、アメリは前ほど動揺はしなかった。
燃えるようなキスに、アメリの体を抱きしめる腕の温もり。それだけで、充分だった。言葉にはされなくとも、素っ気ない態度でも、カイルはきっと自分を必要としてくれている。
間もなくして侍女たちがバスタブを室内に運び込み、お湯を注いでくれた。アメリは用意された沐浴用のガウンに身を包み、体を清める。
婚約者といえども今までは侍女のような暮らしぶりだったので、あれこれと手助けされるのは違和感があった。
「自分で出来るから大丈夫です」
やんわりと介添えを断れば、侍女たちは困惑の表情を浮かべた。
入浴が終わり用意された真珠色のドレスに袖を通した頃には、色々なことが一度に起こり過ぎて興奮気味だった気持ちもすっかり落ち着いていた。