獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
(手厚くもてなされなかったことへの腹いせに、婚約者様たちはカイル様の悪い噂を流したのかしら)
おそらく、そうなのだろう。”災いの申し子”として生まれたカイルは、自らがもたらすであろう害から他人を守るために、人を寄せ付けないように徹して生きて来たのだ。
ロイセン城に来るまでに耳にしたカイルの悪い噂は、どれも真相からはかけ離れていた。カイルは婚約者達を無下に扱いはしたが、暴力などは振るっていない。町での数々の悪行も、カイルを妬んだ偽物によるものだった。
(本当に、不器用な人……)
アメリは、目の前にいる金糸雀色の獣が泣きたいほどに愛しく思えてきた。
手を伸ばして金糸雀色の髪の毛に触れれば、カイルは一度瞬きをして、ようやくこちらに顔を向けてくれた。
白い光の中で、天色の瞳がアメリを見つめる。アメリは、そっと微笑んだ。
「このドレス、カイル様が選んでくださったのですか?」
「……そうだ」
「嬉しいわ。真珠色は、母が好きだった色です」
「真珠色? 白ではないのか?」
「白よりも、少し黄みがかっていると思いませんか? 白も、細かく分ければニ十種類くらい色があるんです。目を凝らせば、だんだん分かるようになりますよ」
「……俺には、全く分からない」
顔をしかめるカイルに、アメリは目を細めながら諭す。
「色は無限にあります。そしてその色の一つ一つに意味があるんですよ。亡くなった母は私に教えてくれました。この世は色と、あたたかい言葉に溢れていると。たとえば真珠色の色言葉は、”幸福”でございます」
「幸福……」
「それから、あなたの髪の色のような金糸雀色の色言葉は、”最後の希望”」
おそらく、そうなのだろう。”災いの申し子”として生まれたカイルは、自らがもたらすであろう害から他人を守るために、人を寄せ付けないように徹して生きて来たのだ。
ロイセン城に来るまでに耳にしたカイルの悪い噂は、どれも真相からはかけ離れていた。カイルは婚約者達を無下に扱いはしたが、暴力などは振るっていない。町での数々の悪行も、カイルを妬んだ偽物によるものだった。
(本当に、不器用な人……)
アメリは、目の前にいる金糸雀色の獣が泣きたいほどに愛しく思えてきた。
手を伸ばして金糸雀色の髪の毛に触れれば、カイルは一度瞬きをして、ようやくこちらに顔を向けてくれた。
白い光の中で、天色の瞳がアメリを見つめる。アメリは、そっと微笑んだ。
「このドレス、カイル様が選んでくださったのですか?」
「……そうだ」
「嬉しいわ。真珠色は、母が好きだった色です」
「真珠色? 白ではないのか?」
「白よりも、少し黄みがかっていると思いませんか? 白も、細かく分ければニ十種類くらい色があるんです。目を凝らせば、だんだん分かるようになりますよ」
「……俺には、全く分からない」
顔をしかめるカイルに、アメリは目を細めながら諭す。
「色は無限にあります。そしてその色の一つ一つに意味があるんですよ。亡くなった母は私に教えてくれました。この世は色と、あたたかい言葉に溢れていると。たとえば真珠色の色言葉は、”幸福”でございます」
「幸福……」
「それから、あなたの髪の色のような金糸雀色の色言葉は、”最後の希望”」