獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
永遠とも思える長い時間、キスは降り注いだ。
止まない濃厚なキスに、アメリは息も絶え絶えにカイルの背中に縋りつく。
そこでカイルはようやく唇を貪るのをやめると、息を荒げながらアメリの顔を見た。
「カイル、様……」
間近で光る天色の瞳に、息苦しさから瞳を潤ませたアメリは助けを乞う。
けれども獣は再び目に炎を宿すと、今度はアメリの首筋に舌を這わせた。
同時に這い上がってきた手が、アメリの左胸の膨らみを堪能しはじめる。
「あぁ……っ」
未知なる感情の波が、これまでにないほどアメリを侵食した。
けれどもアメリの鎖骨の下まで唇を落としたカイルは、ふと体の動きを止める。
「……この傷は?」
肩で息をしながら、アメリはカイルの視線を追った。
胸の谷間の中心に、小さな切り傷がある。おそらく、ドーソン男爵にナイフでドレスを裂かれた時に出来たものだろう。
「さっき、ドレスを切られた時に……」
思い出したくないことだが言わないわけにはいかず、アメリはしどろもどろに口を開く。
途端にカイルは全身に殺気をみなぎらせ、瞳を獰猛な獣のごとく尖らせた。
そして、勢いよくその傷跡に吸い付く。
「カイル様……、痛い……っ」
出来て間もない傷を容赦なく吸い上げられる痛みに、アメリの瞳から涙がこぼれ落ちた。
逃れようとしてもカイルはそれを許さず、飢えた獣のごとくアメリの肌を吸い続ける。
痣で傷がすっかり見えなくなった頃、カイルは荒い息を吐きながら、アメリの肩からドレスをずり降ろした。