獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
アメリがカイルの婚約者に戻ったという噂は、瞬く間に城中に広がった。


アメリが城を歩くたびに、侍女や小姓、それから騎士達からつぎつぎとお祝いの言葉を浴びせられた。


カイルがアメリを連れ帰った翌日。


王から謁見を求められ、アメリは直々に「あの強情な息子に見初められたそうだな。良くやった」と笑顔を向けられる。


「何分この時世だから、式はいつ挙げられるか分からん。だが、子を成すのは早ければ早い方がいい。頼んだぞ」


王からの言葉に、アメリは赤面しながら王の間を出る。


そんなアメリに、彼女を王の間の前で待ち構えていたレイモンド司祭が歩み寄ってきた。


「恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ。世継ぎ問題は国の重要な課題ですから、陛下がああおっしゃるのももっともなことなのです」


(聞かれていたのね……)


レイモンド司祭の爽やかな微笑みを前に、アメリはますます赤面する。


「でも、私はまだ正式な王太子妃でもないのに、あんなことをおっしゃられるのはおかしい気がして……」


順序としては、結婚が先だろう。平民も貴族も王族も、そこに差異はないように思う。


するとレイモンド司祭は、回廊を行くアメリに付き添うように歩きながら、小声で耳打ちした。






「ここだけの話ですが……、おそらく陛下は時期王位継承者にはカイル様のお子を、と考えていらっしゃるのだと思います」


え? とアメリはレイモンド司祭に驚きの眼差しを向けた。それはつまり自らの子であるカイルに王位は譲らず、孫に譲ろうと目論んでいるということだろうか。


「正直なところ、カイル殿下は陛下から疎まれています。陛下がカイル殿下から王位継承権を剥奪しようと考えているのは、周知の事実。とはいえ現状では、カイル殿下以外にロイセン王朝の由緒正しい血筋を持つ方はいらっしゃいません。けれどもカイル殿下にお子が生まれれば、話が違ってくるというわけなのですよ」
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