獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
ところが。
――ドカッ。
「ぐおっ」
満面の笑みを浮かべたブランの顔が、瞬時にアメリの前から消え去る。
いなくなったブランの代わりに、アメリの前にゆっくりと黒のロングブーツが歩み寄った。
見上げたアメリは、エメラルドグリーンの瞳を目いっぱい見開いた。
朱色の軍服を着たカイルが、アメリを見下ろしていたからだ。
「いてえっ、足蹴りとかひどすぎるっ。暴力反対!」
涙目のブランは、「お前がバカすぎるんだよ」とあきれ顔の赤髪のカールになだめられながら、二人の前からいなくなった。
「カイル様……」
歓びのあまり立ち上がったアメリを、カイルは上から下までゆっくりと見下ろした。みるみる紅潮する顔面を隠すように片手で覆うと、カイルは素早くアメリから視線を逸らす。
同じような光景に、今まで幾度か出くわした気がした。
(もしかして、照れていらっしゃるのかしら……?)
まさか、と思いながら首を傾げれば、カイルは赤らんだ顔のままアメリに視線を戻した。そして、スッと片手を差し出す。
「俺と……」
後半部分は声が小さすぎて、聞き取れなかった。けれどもアメリは、カイルがダンスを申し込んでくれたことを理解する。
「はい」
にっこりと微笑んでカイルの手を取れば、天色の瞳が安堵の色を浮かべる。
今宵一番の注目を浴びながら、アメリの手を引いたカイルは会場の中心へと歩んで行く。
――ドカッ。
「ぐおっ」
満面の笑みを浮かべたブランの顔が、瞬時にアメリの前から消え去る。
いなくなったブランの代わりに、アメリの前にゆっくりと黒のロングブーツが歩み寄った。
見上げたアメリは、エメラルドグリーンの瞳を目いっぱい見開いた。
朱色の軍服を着たカイルが、アメリを見下ろしていたからだ。
「いてえっ、足蹴りとかひどすぎるっ。暴力反対!」
涙目のブランは、「お前がバカすぎるんだよ」とあきれ顔の赤髪のカールになだめられながら、二人の前からいなくなった。
「カイル様……」
歓びのあまり立ち上がったアメリを、カイルは上から下までゆっくりと見下ろした。みるみる紅潮する顔面を隠すように片手で覆うと、カイルは素早くアメリから視線を逸らす。
同じような光景に、今まで幾度か出くわした気がした。
(もしかして、照れていらっしゃるのかしら……?)
まさか、と思いながら首を傾げれば、カイルは赤らんだ顔のままアメリに視線を戻した。そして、スッと片手を差し出す。
「俺と……」
後半部分は声が小さすぎて、聞き取れなかった。けれどもアメリは、カイルがダンスを申し込んでくれたことを理解する。
「はい」
にっこりと微笑んでカイルの手を取れば、天色の瞳が安堵の色を浮かべる。
今宵一番の注目を浴びながら、アメリの手を引いたカイルは会場の中心へと歩んで行く。