獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「この間、ですか?」


ずっと避けていたことを誤っているのかしら、とアメリは首を傾げる。カイルはアメリを一瞥すると、言いにくそうに切り出した。


「……ベッドの上でだ。お前は震えていた。俺が、嫌だったのだろう? お前を怖がらせて、悪かったと思っている」


アメリは、幾度も瞬きをした。カイルは、とんでもない思い違いをしている。同時に、アメリはカイルに避けられていた理由を察した。


ロイセン城にアメリを連れ帰った時、カイルはアメリを激しく求めた。その時にカイルは、アメリが怯えていると感じ取ってしまったのだ。その罪悪感から、アメリとの間に距離を置いたのだろう。


「……違います。カイル様が、嫌だからではございません」


「では、どうして震えていた?」


「怖かったからです。その、ああいう時にどのように振舞ったらいいか分からず……」


こんなにも、好きなのに。その想いが通じていないことが、心苦しい。


アメリはエメラルドグリーンの瞳で、一心にカイルを見つめた。


「カイル様に触れられるのは、嬉しいです……」






天色の瞳が、ゆっくりと見開かれる。


アメリは微笑んでカイルの驚きに応えると、右手の薬指にはめていた指輪を外し、カイルの掌にそっと置いた。


闇の中で淡い光を灯している金糸雀色のガラス玉に、二人の視線が注がれる。


「これを、あなたに授けます。私の母の形見です。苦しい時も辛い時も、この指輪はいつも私を救ってくれました。今度は、あなたの助けとなるでしょう」


カイルの手を取り、優しく指輪を握り込ませる。


「……貰っていいのか? お前の一番大事なものなのだろう?」


アメリは、緩やかに首を振った。


「いいえ。今の私にとって、一番大切なのはあなたです」

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