獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「アメリ様、あなたにこのようなことを言うのは酷ですが……」
レイモンド司祭は暗い顔をしたまま、コツコツとアメリの方へと歩んできた。
「クロスフィールドへの遠征に、こんなにも時間がかかるのはおかしい。そろそろ、覚悟を決めておいた方が良いでしょう」
祭壇に向かって両手を合わせたままの姿勢で、アメリは全身を強張らせた。
けれども呼吸を整えると、微笑を浮かべてレイモンド司祭を振り返る。
「大丈夫です。私は、信じていますから」
金糸雀色の髪の毛を持つカイルは、選ばれし者だ。
いつもは冗談ばかり口にしているヴァンも、剣の腕前は一流だ。カールは騎士団の中では一番腕が立つと聞いたし、俊敏さではブランに敵う者はいないことも知っている。
あの騎士団は、強い。必ずクロスフィールドに在中しているハイデル公国の兵を討って、帰って来るに決まっている。誰がなんと言おうと、アメリは信じ続ける覚悟だった。
物おじしないアメリの態度に、レイモンド司祭は眉間に皺を寄せる。
それから暗い面持ちのまま黙り込むと、しばらくして意を決したかのように顔を上げた。
「あなたにも、そろそろお話しするべきかもしれませんね」
「何をですか?」
「このロイセン王朝に、古くから伝わる予言の書の存在についてです。そこには、金色の髪を持つ王太子の死と共に、ロイセン王朝が滅びると記されているのです。ですから代々の王は金色の髪の世継ぎが生まれることを恐れ、現ロイセン王は金色の髪を持つカイル殿下の命を守るために軍事から遠ざけていた」
レイモンド司祭の青白い顔を見つめながら、アメリは胸をえぐられるのような衝撃を受けていた。
予言の書の話は知っている。そのために”災いの申し子”としてカイルが忌み嫌われていたことを、以前聞いたからだ。だが、そこにカイルの死が絡んでいるとは聞かされていなかった。
レイモンド司祭は暗い顔をしたまま、コツコツとアメリの方へと歩んできた。
「クロスフィールドへの遠征に、こんなにも時間がかかるのはおかしい。そろそろ、覚悟を決めておいた方が良いでしょう」
祭壇に向かって両手を合わせたままの姿勢で、アメリは全身を強張らせた。
けれども呼吸を整えると、微笑を浮かべてレイモンド司祭を振り返る。
「大丈夫です。私は、信じていますから」
金糸雀色の髪の毛を持つカイルは、選ばれし者だ。
いつもは冗談ばかり口にしているヴァンも、剣の腕前は一流だ。カールは騎士団の中では一番腕が立つと聞いたし、俊敏さではブランに敵う者はいないことも知っている。
あの騎士団は、強い。必ずクロスフィールドに在中しているハイデル公国の兵を討って、帰って来るに決まっている。誰がなんと言おうと、アメリは信じ続ける覚悟だった。
物おじしないアメリの態度に、レイモンド司祭は眉間に皺を寄せる。
それから暗い面持ちのまま黙り込むと、しばらくして意を決したかのように顔を上げた。
「あなたにも、そろそろお話しするべきかもしれませんね」
「何をですか?」
「このロイセン王朝に、古くから伝わる予言の書の存在についてです。そこには、金色の髪を持つ王太子の死と共に、ロイセン王朝が滅びると記されているのです。ですから代々の王は金色の髪の世継ぎが生まれることを恐れ、現ロイセン王は金色の髪を持つカイル殿下の命を守るために軍事から遠ざけていた」
レイモンド司祭の青白い顔を見つめながら、アメリは胸をえぐられるのような衝撃を受けていた。
予言の書の話は知っている。そのために”災いの申し子”としてカイルが忌み嫌われていたことを、以前聞いたからだ。だが、そこにカイルの死が絡んでいるとは聞かされていなかった。