獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
熱くて、優しくて、泣きたいほどに幸福な時間だった。


生まれたままの姿で全身をくまなく愛され、彼の感触を余すところなく刻まれた。


乱れたシーツの上で、未知の感覚のうねりに震えるアメリの指先を、カイルの節くれ立った指が絡めとる。


重なり合う甘い吐息は、月明かりに照らされた秋の闇間に、幾度も落ちては消えた。





「アメリ」


一つになった時、痛みに目をぎゅっと閉じたアメリを、カイルが呼び起こす。


初めて名前を呼ばれて驚いたアメリが目を開ければ、恍惚とした天色の瞳が、ひたむきにアメリを見つめていた。


「目を閉じるな。ずっと、俺だけを見ていろ」


疼痛はやがて、甘い疼きに変わっていった。身体が、世界が、大きな波に溶けていく。
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