獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
不敵な笑みを浮かべれば、凍り付いたようにカイルを見ているヴァンと目が合った。


ヴァンは泣き顔にも似た笑みを浮かべると、「俺は欲深いですよ」とかすれた声を出す。


「あ、ヴァンさんが泣きそうになってる。陛下にいじめられたんですか?」


「お前知らないの? ヴァンさんって、意外と涙もろいんだよ」


後ろから、からかうようなブランとカールの声が聞こえた。





やがてロイセン王国の騎士団は全員無事に川を渡り終え、夜のうちにハイデル公国の領地に降り立った。


ロイセン王国との国境とは違い、見渡す限りこちらには見張りの兵士がいない。ラオネスク側から敵兵が来ることなど、想像もしていないのだろう。


騎乗し一列に並ぶ騎士団の中から一歩抜け出たカイルは、騎士一人一人の顔を確認する。


そして、天高く自らの剣を掲げた。


「――――行くぞ!」


獣の雄たけびを皮切りに、騎士達は一斉に馬を嘶かせた。


そして、自国の平和のために全速力で夜の平野を駆け抜けた。

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