獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
◇
カイル率いる騎士団がロイセン王国を経って、二ヶ月が過ぎようとしていた。
夜が深まり城がすっかり寝静まった頃、アメリはネグリジェ姿で一人自室のバルコニーにいた。
吹く風は凍えるように寒く、冬の空気はキンと張り詰めている。見上げれば、満月を数日過ぎた月が夜空にぽっかりと浮かんでいた。
騎士団の安否は、いまだ不明だ。
けれどハイデル公国内がいまだかつてないほど騒然としているとの噂は入って来たため、何かしらの攻撃を仕掛けたのだろうと憶測されていた。
どちらが勝ち、負けたのか。そして騎士団は、この国の若き王は存命なのか。そんな細かな情報は何一つないまま、時だけが無情に過ぎていく。
「綺麗……」
アメリは天を見上げて微笑んだ。今宵の月は、見るも見事な金糸雀色だ。気温と湿度が生み出した、奇跡だろう。
自然と愛しい恋人の面影が月に重なり、アメリの心は満たされる。
今頃、どこで何をしているのか。どんなに時が過ぎようと、アメリに出来るのは彼を信じて待つことだけだ。
その時だった。
――カンカンカンカン!
見張り塔から、けたたましい鐘の音が響き渡る。
耳をつんざく騒音に、アメリは驚き見張り塔を見上げる。
「皆、起きろ!!!」
円柱型の塔の頂では、見張り番があらん限りの声で叫んでいた。
「国王が帰って来たぞ!! 起きて、出迎えるんだ!!」
カイル率いる騎士団がロイセン王国を経って、二ヶ月が過ぎようとしていた。
夜が深まり城がすっかり寝静まった頃、アメリはネグリジェ姿で一人自室のバルコニーにいた。
吹く風は凍えるように寒く、冬の空気はキンと張り詰めている。見上げれば、満月を数日過ぎた月が夜空にぽっかりと浮かんでいた。
騎士団の安否は、いまだ不明だ。
けれどハイデル公国内がいまだかつてないほど騒然としているとの噂は入って来たため、何かしらの攻撃を仕掛けたのだろうと憶測されていた。
どちらが勝ち、負けたのか。そして騎士団は、この国の若き王は存命なのか。そんな細かな情報は何一つないまま、時だけが無情に過ぎていく。
「綺麗……」
アメリは天を見上げて微笑んだ。今宵の月は、見るも見事な金糸雀色だ。気温と湿度が生み出した、奇跡だろう。
自然と愛しい恋人の面影が月に重なり、アメリの心は満たされる。
今頃、どこで何をしているのか。どんなに時が過ぎようと、アメリに出来るのは彼を信じて待つことだけだ。
その時だった。
――カンカンカンカン!
見張り塔から、けたたましい鐘の音が響き渡る。
耳をつんざく騒音に、アメリは驚き見張り塔を見上げる。
「皆、起きろ!!!」
円柱型の塔の頂では、見張り番があらん限りの声で叫んでいた。
「国王が帰って来たぞ!! 起きて、出迎えるんだ!!」