獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「アメリ様、なかなか会いに来ることが出来ずに申し訳ございません」
その日の夕食後、食堂で一人きりの食事を終え、部屋に戻ろうとアメリが廊下を歩んでいると、食堂から居館へと続く回廊でヴァンがアメリを待ち伏せしていた。
「ヴァン……!」
信頼のおけるヴァンに数日ぶりに会えた喜びから、アメリはすぐに駆け寄った。間近でアメリの顔を見るなり、ヴァンは眉根を寄せる。
「アメリ様。少し、お痩せになったのではないですか?」
「……そう? 暗いから、そう見えるだけじゃないかしら」
実際、この城に来てからアメリはめっきり食欲がなかった。今夜の夕食もパンに豆とじゃがいものスープだったが、スープの方にはほとんど手をつけることが出来ていない。けれどもヴァンに心配をかけたくなくて、アメリは笑って誤魔化した。
「それに、その恰好……。まるで、召使いの着る服じゃないですか」
「そう? 動き易くて、結構気に入っているのよ。ヴァンの方はどう? 強くて素敵な騎士様が入られたって、侍女たちが騒いでいたわ」
ウィシュタット伯爵家で騎士として活躍していたヴァンは、即戦力として日がな騎士団と共に訓練に励んでいた。隣国がいつ攻めて来るかという状況に置かれているロイセン王国の騎士達は、朝から晩まで訓練に明け暮れている。
「俺のことより、あなたのことです。あの悪魔に、ひどい目に遭わされていやしませんか?」
「……いいえ。大丈夫よ」
アメリは、出来るだけ明るく振舞う。
今すぐに逃げ出したい。そんな想いを吐き出したら、自分を妹のように大切に思ってくれているこの騎士は、すぐにでもアメリをここから連れ出そうとするだろう。
ヴァンには、絶対に迷惑をかけたくない。
そんなアメリの心情に気づいているのか、ヴァンは物言いたげにアメリを見つめた。
それから、
「あの悪魔め。いつか絶対に、痛い目に遭わせてやる」
悔しそうに、そう小声で呟くのだった。
その日の夕食後、食堂で一人きりの食事を終え、部屋に戻ろうとアメリが廊下を歩んでいると、食堂から居館へと続く回廊でヴァンがアメリを待ち伏せしていた。
「ヴァン……!」
信頼のおけるヴァンに数日ぶりに会えた喜びから、アメリはすぐに駆け寄った。間近でアメリの顔を見るなり、ヴァンは眉根を寄せる。
「アメリ様。少し、お痩せになったのではないですか?」
「……そう? 暗いから、そう見えるだけじゃないかしら」
実際、この城に来てからアメリはめっきり食欲がなかった。今夜の夕食もパンに豆とじゃがいものスープだったが、スープの方にはほとんど手をつけることが出来ていない。けれどもヴァンに心配をかけたくなくて、アメリは笑って誤魔化した。
「それに、その恰好……。まるで、召使いの着る服じゃないですか」
「そう? 動き易くて、結構気に入っているのよ。ヴァンの方はどう? 強くて素敵な騎士様が入られたって、侍女たちが騒いでいたわ」
ウィシュタット伯爵家で騎士として活躍していたヴァンは、即戦力として日がな騎士団と共に訓練に励んでいた。隣国がいつ攻めて来るかという状況に置かれているロイセン王国の騎士達は、朝から晩まで訓練に明け暮れている。
「俺のことより、あなたのことです。あの悪魔に、ひどい目に遭わされていやしませんか?」
「……いいえ。大丈夫よ」
アメリは、出来るだけ明るく振舞う。
今すぐに逃げ出したい。そんな想いを吐き出したら、自分を妹のように大切に思ってくれているこの騎士は、すぐにでもアメリをここから連れ出そうとするだろう。
ヴァンには、絶対に迷惑をかけたくない。
そんなアメリの心情に気づいているのか、ヴァンは物言いたげにアメリを見つめた。
それから、
「あの悪魔め。いつか絶対に、痛い目に遭わせてやる」
悔しそうに、そう小声で呟くのだった。