獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
(なんて強さなの……)
カイルの剣の腕は、抜きんでていた。細身ではあるが、男らしく筋肉質な腕に、鍛え上げられた胸板。あれほどの腕力と俊敏さを手に入れるには、幼い頃から相当稽古を積んだのだろう。
呆気にとられ、押し車を手に立ち止まっていたアメリは、そこではっと我に返る。
カイルが、アメリの方へと近づいて来たからだ。
けれどもカイルはアメリに気づくことなく、稽古中の少年騎士達の前に歩んで行く。
ロイセン城には、数十名の騎士見習いの少年たちがいる。年は九歳から十四歳ほどで、見習いを経て少年たちは正式に騎士団への加入が認められるのだ。騎士見習いのうちは小姓の役割も担っているため、王宮内で見かけることも多い。
「えいっ! やっ!」
少年騎士たちは、一列に並び高い掛け声を上げながら、懸命に剣の素振りに励んでいる。その一番端に、アメリはアレクがいることに気づいた。
アレクは、小姓として時々アメリの世話を任されている少年だった。といってもアメリはほぼ侍女に等しい扱いを受けているので、食事を呼びに来たり部屋のシーツを運んでくれたりといった、簡易的な用事だけだ。
猫っ毛の薄茶色の髪に、瞑らな瞳。いつもおどおどとしていて声は小さく、アメリと目を合わせようともしない。少年騎士団に加入しているからには九歳を超えているはずだが、体格も七歳ほどにしか見えない。
体格のいい少年たちが並んでいる中にいると、アレクはよりか弱く見えた。剣が重いのか、一振り一振りがやっとの様子で、声もほとんど出ていない。そんなアレクに、他の少年たちは時折嘲笑の眼差しを送っている。
少年騎士達の素振りの様子を一人ずつ眺めていたカイルは、やがてアレクの前で足を止め、不格好に剣を振るアレクをじっと見つめた。
カイルの剣の腕は、抜きんでていた。細身ではあるが、男らしく筋肉質な腕に、鍛え上げられた胸板。あれほどの腕力と俊敏さを手に入れるには、幼い頃から相当稽古を積んだのだろう。
呆気にとられ、押し車を手に立ち止まっていたアメリは、そこではっと我に返る。
カイルが、アメリの方へと近づいて来たからだ。
けれどもカイルはアメリに気づくことなく、稽古中の少年騎士達の前に歩んで行く。
ロイセン城には、数十名の騎士見習いの少年たちがいる。年は九歳から十四歳ほどで、見習いを経て少年たちは正式に騎士団への加入が認められるのだ。騎士見習いのうちは小姓の役割も担っているため、王宮内で見かけることも多い。
「えいっ! やっ!」
少年騎士たちは、一列に並び高い掛け声を上げながら、懸命に剣の素振りに励んでいる。その一番端に、アメリはアレクがいることに気づいた。
アレクは、小姓として時々アメリの世話を任されている少年だった。といってもアメリはほぼ侍女に等しい扱いを受けているので、食事を呼びに来たり部屋のシーツを運んでくれたりといった、簡易的な用事だけだ。
猫っ毛の薄茶色の髪に、瞑らな瞳。いつもおどおどとしていて声は小さく、アメリと目を合わせようともしない。少年騎士団に加入しているからには九歳を超えているはずだが、体格も七歳ほどにしか見えない。
体格のいい少年たちが並んでいる中にいると、アレクはよりか弱く見えた。剣が重いのか、一振り一振りがやっとの様子で、声もほとんど出ていない。そんなアレクに、他の少年たちは時折嘲笑の眼差しを送っている。
少年騎士達の素振りの様子を一人ずつ眺めていたカイルは、やがてアレクの前で足を止め、不格好に剣を振るアレクをじっと見つめた。