獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
悪名高き王太子の視線を感じ、アレクはより一層懸命に剣を振り始めた。けれども足はもつれ、振れば振るほどに剣の軌道はふにゃふにゃと乱れていく。


その様子を見て、他の少年たちは大声で笑い出した。


「さすが、弱虫アレクだ」


「あいつ、目障りだからさっさと故郷に帰ればいいのに」


心無い声が、ひそひそと囁かれる。





「お前、やる気があるのか?」


アレクを見据える鎧兜の向こうから、冷ややかな声がした。


アレクは剣の手を止めないままに、怯えたように鎧兜の王太子を見上げ、ブンブンと頷く。


「やる気があって、それなのか?」


「……はい」


すると突如、カイルは腰に差した剣を抜いた。そして、勢いよく剣を振り下ろし、アレクの剣を払った。


アレクの小さな手から離れた剣が、地面に転がる。その様子を、アレクは震えながら見ていた。


年端もいかない子供相手でも容赦のない悪獅子は、鼠の子のように怯え切っているアレクに、追い打ちをかけるように嘲笑うような声を投げかける。


「お前に、剣は向いていないな」





(非力な子供相手に、なんてことを……)


黙って事の成り行きを見守っていたアメリだったが、我慢の限界だった。気づけば走り出し、アレクの傍に駆け寄っていた。そして、震える少年を守るようにその肩に触れる。
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