獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
ヴァンの全身から、アメリを全力で守ろうとする強い意志が漲っている。そんなヴァンに、カイルはじっと視線を注ぐ。


やがてカイルは、何も言わないままに剣を鞘にしまった。そして、二人に背を向けその場を立ち去る。


一介の騎士に過ぎないのに無礼を働いたヴァンに対し、一言も発しないのは逆に気味が悪かった。胸騒ぎを覚えつつ、騎士たちの中へ紛れるカイルの背中をアメリは見送る。


「アメリ様、大丈夫でしたか?」


「ええ。ヴァン、ありがとう……」


「当然のことをしたまでです」


後方から、女たちの歓声がした。振り返れば、いつから見ていたのか、庭仕事中の侍女達が寄り集まって熱い視線をヴァンに投げかけている。


甘いマスクを持つ騎士の男らしい行動に、どうやら骨抜きにされてしまったようだ。サービス精神旺盛なヴァンはそんな彼女たちに手を挙げ応えると、名残惜しそうにアメリに微笑を見せ、訓練に戻った。









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