獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
相も変わらず鎧兜に顔を隠したカイルが、噴水の脇にいる少年たちの方へと近づいて来る。


咄嗟に、アメリは再び木の陰に隠れた。唐突な悪獅子の登場に、アレクをはじめ、少年たちは皆固唾を呑んでいる。





「騒いでいたのは、どいつだ?」


立ち止まったカイルは、少年たちをねぶるように眺め回した。


「そ、それは……」


カイルから醸し出される威圧感に、先ほどまでアレクをいじめていた少年たちは震え上がっていた。罪を擦り付け合うように、瞳を泳がせ視線を交わし合っている。


そんな少年たちをじっとりと一瞥したあと、カイルはより低い声を出した。


「俺は、騒がしいのが嫌いなんだ。知っているか?」


「し、知っております……」


「なら、さっさとここを離れろ」


「は、はい……っ!」


蜘蛛の子を散らすように、カイルのもとから走って逃げ出す少年たち。中には、今にも泣き出しそうな顔をしている子供もいた。悪獅子の悪名は、子供達の間にもすっかり浸透しているらしい。


やや遅れて、アレクも本を拾い上げ逃げ出そうとする。ところがカイルはアレクの首根っこを掴むと、「お前は行くな」と引き留めた。






青ざめた顔で、アレクはカイルを見上げる。また、怒られると思っているのだろう。


ところが、カイルは強引にアレクの顔を自分の方に向けると、


「お前、名前は?」


何故か、そんな質問を繰り出す。
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