獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
タイミングがいいのか悪いのか、同時に重なった声。アメリは、みるみる目を見開いた。
(昨日のことを、謝っていらっしゃるの……?)
驚きのあまり、アメリは言葉を返すことが出来ない。
けれども、鎧兜に隠れた顔はアメリの方を見ていない。
(聞き間違いかしら……?)
アメリは、噴水に腰かけたカイルの手もとに視線を落とす。手持ち無沙汰に不自然に動く指先が、彼の心の動揺を物語っていた。おそらく、他人に謝ることに馴れていないのだろう。
(はっきりとは聞こえなかったけど、やはり謝って来られたのだわ……)
「もう、去ってよい。お前が去らないなら、俺が去る」
どことなくイラついた口調で、カイルが言う。立ち上がろうと背を屈めた彼を、アメリは咄嗟に「お待ちください」と引き留めていた。
「なんだ? もう、お前に用はない」
いつもと変わらない、刺々しい口調。だが、アメリは確かに先ほど、カイルが心を開いてくれたのを感じた。
ほんの小さな変化だ。ただの気まぐれの可能性もあるし、アメリに好意を持ってくれたわけでもないのも分かっている。
それでも、悪魔と呼ばれ畏怖されている彼の心の内を覗くなら、今しかないと思った。
だから、賭けに出ようと心に決めたのだ。
「私は、あなたを許しません」
一瞬の硬直ののち、不意をつかれたようにカイルが顔を上げる。
「……なんだと?」
「あなたが昨日私にした行為を、そのような短い謝罪だけで許すことは出来ません。私は、あなたに深く傷つけられました」
「………」
(昨日のことを、謝っていらっしゃるの……?)
驚きのあまり、アメリは言葉を返すことが出来ない。
けれども、鎧兜に隠れた顔はアメリの方を見ていない。
(聞き間違いかしら……?)
アメリは、噴水に腰かけたカイルの手もとに視線を落とす。手持ち無沙汰に不自然に動く指先が、彼の心の動揺を物語っていた。おそらく、他人に謝ることに馴れていないのだろう。
(はっきりとは聞こえなかったけど、やはり謝って来られたのだわ……)
「もう、去ってよい。お前が去らないなら、俺が去る」
どことなくイラついた口調で、カイルが言う。立ち上がろうと背を屈めた彼を、アメリは咄嗟に「お待ちください」と引き留めていた。
「なんだ? もう、お前に用はない」
いつもと変わらない、刺々しい口調。だが、アメリは確かに先ほど、カイルが心を開いてくれたのを感じた。
ほんの小さな変化だ。ただの気まぐれの可能性もあるし、アメリに好意を持ってくれたわけでもないのも分かっている。
それでも、悪魔と呼ばれ畏怖されている彼の心の内を覗くなら、今しかないと思った。
だから、賭けに出ようと心に決めたのだ。
「私は、あなたを許しません」
一瞬の硬直ののち、不意をつかれたようにカイルが顔を上げる。
「……なんだと?」
「あなたが昨日私にした行為を、そのような短い謝罪だけで許すことは出来ません。私は、あなたに深く傷つけられました」
「………」