獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
カイルは、驚くほどに整った顔立ちをしていた。鋭利な刃物のように鋭い切れ長のブルーの瞳に、品良くラインを描く鼻梁。薄い唇は不機嫌そうに結ばれていたが、それでも見惚れるほどの美男だった。


けれどもアメリが目を奪われたのは、カイルの顔ではない。


太陽の光を吸い込んだかのように輝く髪だった。






金よりもより神々しいその色を、アメリの母は金糸雀色と呼んだ。多種多様な色の中でも色彩を出すのが一番難しいのだと、母は言っていた。


この色味を出すのに、定まった法則はない。奇跡を待つしかない特別な色なのだと、苦笑した母の顔を思い出す。


金糸雀色の色言葉は――”最後の希望”。





「殿下は、どうしていつも鎧兜を被っておられるのですか……?」


問うと、カイルは露骨に表情を歪めた。


「お前に言うようなことじゃない」


素顔を見せても、カイルは相変わらずのカイルだった。つっけんどんなもの言いで、アメリから視線を背ける。


(この人は、心まで鎧で覆っているのね)


見えない鎧を脱がせるのは、至難の業だ。


アメリの方を絶対に見ようとしないブルーの瞳を、アメリは複雑な気持ちで見つめた。


夏の空のように、どこまでも深いブルー。そんな色を、母は天色と呼んだ。


天色の色言葉は――”純心”。



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