獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
胸もとに、熱い息を感じた。


そこで、アメリは我に返る。


(私、何をしているの……?)


慌ててカイルから身を剥がし、アメリはその場にひれ伏した。地面に鼻先が当たりそうになるほどに、深く頭を下げる。


「出過ぎた真似をして、申し訳ございません……!」





今度こそ、伐りつけられるだろうと思った。珍しい金糸雀色の髪を目にして我を忘れていたが、彼はあのカイル王太子なのだ。”悪獅子”や”悪魔”と罵られ、悪い噂の絶えない非道な男なのだ。


アメリが必死に謝っても、カイルは何も言葉を返して来なかった。


けれども、噴水から離れる様子もなく無言のまま座っている。


アメリは、怖々と顔を上げた。


カイルは、顔の半分を片手で覆いながら俯いていた。


表情はよく見えないが、怒っているのだろう。襟足まで伸びた金糸雀色の髪の毛から覗く耳が、異様に赤い。


(どうしよう……)


脅えながらカイルを見ていると、ふいに目が合った。カイルはすぐにアメリから顔を逸らすと、


「もう行け」


素っ気なく、そう言い放った。


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