獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「アメリ様」
改まったように、ヴァンが口を開いた。
「引き返すなら、今です。ウィシュタット伯爵が反対しても、俺が全力で押し切りますから」
「帰りたいなんて思っていないわ」
「しかし、相手は悪魔と呼ばれる王太子ですよ」
ヴァンが、ついにその不安を口にした。いつになく真剣な眼差しで自分を見ているヴァンを、アメリは物おじすることなく見返す。
「いいのよ」
ヴァンの不安を蹴散らすように、アメリは微笑んだ。
「私だって、この黒髪のせいでお姉さまたちに魔女と呼ばれてきたわ。悪魔と魔女。ちょうどいいじゃない」
冗談めかして笑って見せても、目の前の騎士はもう笑顔を返すことはなかった。それほどに、アメリのことが心配なのだろう。
アメリだって不安だ。だがウィシュタット家にアメリの居場所はもうない。行くしかないのだ。
悪獅子、悪魔、人でなし。
そんな異名を持つ、悪名高き王太子の妻になるために。
改まったように、ヴァンが口を開いた。
「引き返すなら、今です。ウィシュタット伯爵が反対しても、俺が全力で押し切りますから」
「帰りたいなんて思っていないわ」
「しかし、相手は悪魔と呼ばれる王太子ですよ」
ヴァンが、ついにその不安を口にした。いつになく真剣な眼差しで自分を見ているヴァンを、アメリは物おじすることなく見返す。
「いいのよ」
ヴァンの不安を蹴散らすように、アメリは微笑んだ。
「私だって、この黒髪のせいでお姉さまたちに魔女と呼ばれてきたわ。悪魔と魔女。ちょうどいいじゃない」
冗談めかして笑って見せても、目の前の騎士はもう笑顔を返すことはなかった。それほどに、アメリのことが心配なのだろう。
アメリだって不安だ。だがウィシュタット家にアメリの居場所はもうない。行くしかないのだ。
悪獅子、悪魔、人でなし。
そんな異名を持つ、悪名高き王太子の妻になるために。