獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
その時、背後にある扉が音をたてて開いた。
給仕係が何かしに来たのだろうと思い、アメリは気にも留めずに食事を続ける。
だが、ツカツカという足音に続いて人の姿が視界に入るなり、アメリは驚きのあまり持っていたスプーンを落としそうになった。
それが、鎧兜を被っていないカイルだったからだ。
カイルは、アメリには目もくれずに最奥の席に座った。獅子の壁掛け布の真下、長テーブルを挟んでアメリと対面する形で食事を待つ。
すぐに、怯えた様子の給仕係が食事を運んできた。中年のふくよかなその女は、食器をカイルの前に置いたあとで、目を瞬いてカイルの顔を二度見した。
鎧兜を被っていないカイルの姿に、困惑しているようだ。
「なんだ?」
「いっ、いえっ……! なんでもございません……!」
鋭い碧眼にギロリと睨まれ、給仕係はせっつかれたように背筋を伸ばすと、そそくさとその場を離れた。
(こんな時間に朝食を摂られるだなんて、どうされたのかしら?)
雑用仕事で一日が埋まっているアメリは、六時には朝食を済ます。王や王太子は、起床時間が早くとも七時と聞いた。それから礼拝堂で祈りを済ませるので、朝食は八時頃のはずだ。
(今日は、何か特別なご用事があるのかしら……?)
そう思ったところで、アメリははっと我に返る。あろうことか、いまだ挨拶もしていなかったからだ。
アメリは慌てて席を立つと、両手でスカートの裾を持ち腰を落とした。
「おはようございます、カイル殿下」
給仕係が何かしに来たのだろうと思い、アメリは気にも留めずに食事を続ける。
だが、ツカツカという足音に続いて人の姿が視界に入るなり、アメリは驚きのあまり持っていたスプーンを落としそうになった。
それが、鎧兜を被っていないカイルだったからだ。
カイルは、アメリには目もくれずに最奥の席に座った。獅子の壁掛け布の真下、長テーブルを挟んでアメリと対面する形で食事を待つ。
すぐに、怯えた様子の給仕係が食事を運んできた。中年のふくよかなその女は、食器をカイルの前に置いたあとで、目を瞬いてカイルの顔を二度見した。
鎧兜を被っていないカイルの姿に、困惑しているようだ。
「なんだ?」
「いっ、いえっ……! なんでもございません……!」
鋭い碧眼にギロリと睨まれ、給仕係はせっつかれたように背筋を伸ばすと、そそくさとその場を離れた。
(こんな時間に朝食を摂られるだなんて、どうされたのかしら?)
雑用仕事で一日が埋まっているアメリは、六時には朝食を済ます。王や王太子は、起床時間が早くとも七時と聞いた。それから礼拝堂で祈りを済ませるので、朝食は八時頃のはずだ。
(今日は、何か特別なご用事があるのかしら……?)
そう思ったところで、アメリははっと我に返る。あろうことか、いまだ挨拶もしていなかったからだ。
アメリは慌てて席を立つと、両手でスカートの裾を持ち腰を落とした。
「おはようございます、カイル殿下」