獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
カイルはスプーンを手にしたままちらりとアメリに視線を向けると、
「ああ」
一言答えて、すぐに食事に戻った。相も変わらず素っ気ない。
(でも、ひどいことを言われなかっただけ良かったわ)
昨日のことでどんな仕打ちを受けるのだろうと怖くて仕方がなかったが、この様子だと処罰を受ける様子はない。冷たい態度なのには変わりはないが、ひとまず安心して良いのだろう。
(今日は鎧兜をかぶっていらっしゃらないし、もしかして、少しは心を開いてくれたのかしら)
過度な期待はしてはいけないと思いながらも、ついそんな風に考えてしまう。
ぐるぐると思考を巡らすアメリには気にも留めずに、カイルは黙々と食事を続けている。
どんなに悪名が横行していようと、さすが由緒正しい高貴な血筋を持つ王太子なだけあり、食事をする姿に品を感じる。
所作の一つ一つが、優雅で美しいのだ。
だが、一緒に向かい合って食事をしてはいても、カイルがアメリに何かを話しかける様子はない。
アメリの方も、何をどう話しかけていいのか分からない。
会話のない食事が、こんなにもヤキモキするものだとはアメリは思わなかった。相手が、カイルなら尚更だ。