獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
気まずさを覚えながらアメリがぎこちなくちぎったパンを口に運んでいるうちに、カイルはあっという間に食事を終えてしまった。


結局、最初の挨拶以外はお互い全く言葉を交わさなかった。ものの十分ほどの短い時間だったが、アメリはその何倍も長い時間を、カイルと過ごした気になっていた。


カイルは、食事を終えるなりすぐに椅子から立ち上がる。けれども、どういうわけか一向に扉に向かおうとはしない。


「………?」


違和感を覚えたアメリは、カイルにちらりと視線を向ける。テーブルの前に立ち尽くしたまま、カイルは思案するように自分の顎先に手を当てがっていた。


(どうかされたのかしら)


不思議に思い、アメリはカイルを見つめた。


金糸雀色の髪は、日の光があまり届かない食堂では色味がやや濃く見えた。


改めて見ても、綺麗な顔立ちをした人だと思う。けれども美しさの裏には猛々しい男らしさも垣間見えていて、それが彼の魅力を絶妙に深めている。


醜男だという噂を流したのは、いったいどこの誰なのだろう? その人は、カイルの素顔を知らなかったのではないだろうか? 







あまりにじっくりとカイルの顔を眺めていたせいか、ふと目が合った。


途端にカイルは険しい表情になると、アメリから目を逸らす。


(顔が、赤い……? また、怒っていらっしゃるのかしら……)


アメリが不安を覚えていると、


「お前」


唐突に、カイルが切り出した。
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