獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「……好きな色は、何だ?」
アメリは、目を丸くした。
「私に聞いていらっしゃるのですか?」
「お前以外に、誰がいる」
好きな色? カイルの唐突な質問に、アメリは困惑した。少しは心を開いてくれた様子とはいえ、アメリを嫌っているはずのカイルは、何ゆえアメリの好きな色など知りたがるのだろう。
どんなに考えても、その答えは出なかった。だから、とりあえず正直に答える。
「どんな色でも、好きでございます」
色彩のスペシャリストである母とは、よく色の話をした。そのことが懐かしく思い出され、温かい気持ちになる。
どんな色でも、素敵な意味がある。優劣はつけがたい。
だが、それはカイルの求めていた答えではなかったようだ。カイルは露骨に不機嫌な顔になると、
「そういうことを聞いているのではない。好きな色を一つ選べと言っているんだ」
棘のある口調で、再び聞いてくる。
「一つ、ですか……」
ますますカイルの意図が分からなくなったアメリは、エメラルドグリーンの瞳を瞬いた。とにかく、好きな色を一つに絞らなければいけないらしい。
「そうですね。しいて言うなら、青でございます」
あなたの瞳のような、と言いかけてアメリは言葉を呑み込んだ。出過ぎたことをして、もう後悔したくない。
「青、か」
まるで自分に言い聞かせるような声色で、カイルが呟く。
そしてそれ以上は話を続けることもなく、もちろん去り際の挨拶もなしに、アメリの横を通って食堂の外へと出て行った。
アメリは、目を丸くした。
「私に聞いていらっしゃるのですか?」
「お前以外に、誰がいる」
好きな色? カイルの唐突な質問に、アメリは困惑した。少しは心を開いてくれた様子とはいえ、アメリを嫌っているはずのカイルは、何ゆえアメリの好きな色など知りたがるのだろう。
どんなに考えても、その答えは出なかった。だから、とりあえず正直に答える。
「どんな色でも、好きでございます」
色彩のスペシャリストである母とは、よく色の話をした。そのことが懐かしく思い出され、温かい気持ちになる。
どんな色でも、素敵な意味がある。優劣はつけがたい。
だが、それはカイルの求めていた答えではなかったようだ。カイルは露骨に不機嫌な顔になると、
「そういうことを聞いているのではない。好きな色を一つ選べと言っているんだ」
棘のある口調で、再び聞いてくる。
「一つ、ですか……」
ますますカイルの意図が分からなくなったアメリは、エメラルドグリーンの瞳を瞬いた。とにかく、好きな色を一つに絞らなければいけないらしい。
「そうですね。しいて言うなら、青でございます」
あなたの瞳のような、と言いかけてアメリは言葉を呑み込んだ。出過ぎたことをして、もう後悔したくない。
「青、か」
まるで自分に言い聞かせるような声色で、カイルが呟く。
そしてそれ以上は話を続けることもなく、もちろん去り際の挨拶もなしに、アメリの横を通って食堂の外へと出て行った。