獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
カイル・エリオン・アルバーン。
ロイセン王国内で、その王太子の名を知らない者はいないだろう。
城下町で度々暴れ幾人にも怪我を負わせたことがあるだとか、従者にも暴力ばかりで城に混乱を招いているだとか。カイル王太子に関する悪い噂は、貴族だけでなく平民にまで知れ渡っている。
極めつけは、城に招かれた婚約者たちによる悪評だ。伯爵令嬢から辺境伯令嬢まで、これまで彼の婚約者として城に上がった者は総勢四名になるが、皆が口を揃えて彼を”悪魔”と罵ったという。
乱暴を働かれた者、暴言を吐かれた者、人としての扱いを受けなかった者。おまけに城から逃げ出し生家に戻っても、世間からは”悪獅子の手付きの汚れた令嬢”という奇異の目で見られ辛い思いをするという。
いずれは妃という最高地位を手に出来るのに、これほどまでに婚約者探しが難航しているのは、王太子の悪い噂のせいだけではない。
そもそも、弱小国であるロイセン王国は、この先滅びの道を歩むだろうとまことしやかに囁かれている。戦争に負けた時王妃という立場にいたならば、処刑は免れない。運が良くても、幽閉されて一生を不自由な身で過ごすことになるだろう。
そんな絶望的な未来が見える中、好んで婚約者になりたがる令嬢はなかなか見つからないのだ。
とはいえ、王太子も今年で齢二十四。このまま伴侶を娶らないというわけにはいかないから、城からは年頃の令嬢に次々と声をかけているようだ。けれども、誰もが苦し紛れの言い訳を並べ、悪名高き王太子の婚約者の座から逃げ回っているらしい。
そこで白羽の矢が立ったのが、アメリというわけだった。アメリは伯爵令嬢といえども、ウィシュタット伯爵の妾の子供だ。おまけに十歳までは平民の育ちとあって、家族からも世間からも蔑すまれて育った。
言うなれば、アメリはまるで厄介払いをされるように、悪獅子の婚約者を押し付けられ城に行かされているわけである。
ロイセン王国内で、その王太子の名を知らない者はいないだろう。
城下町で度々暴れ幾人にも怪我を負わせたことがあるだとか、従者にも暴力ばかりで城に混乱を招いているだとか。カイル王太子に関する悪い噂は、貴族だけでなく平民にまで知れ渡っている。
極めつけは、城に招かれた婚約者たちによる悪評だ。伯爵令嬢から辺境伯令嬢まで、これまで彼の婚約者として城に上がった者は総勢四名になるが、皆が口を揃えて彼を”悪魔”と罵ったという。
乱暴を働かれた者、暴言を吐かれた者、人としての扱いを受けなかった者。おまけに城から逃げ出し生家に戻っても、世間からは”悪獅子の手付きの汚れた令嬢”という奇異の目で見られ辛い思いをするという。
いずれは妃という最高地位を手に出来るのに、これほどまでに婚約者探しが難航しているのは、王太子の悪い噂のせいだけではない。
そもそも、弱小国であるロイセン王国は、この先滅びの道を歩むだろうとまことしやかに囁かれている。戦争に負けた時王妃という立場にいたならば、処刑は免れない。運が良くても、幽閉されて一生を不自由な身で過ごすことになるだろう。
そんな絶望的な未来が見える中、好んで婚約者になりたがる令嬢はなかなか見つからないのだ。
とはいえ、王太子も今年で齢二十四。このまま伴侶を娶らないというわけにはいかないから、城からは年頃の令嬢に次々と声をかけているようだ。けれども、誰もが苦し紛れの言い訳を並べ、悪名高き王太子の婚約者の座から逃げ回っているらしい。
そこで白羽の矢が立ったのが、アメリというわけだった。アメリは伯爵令嬢といえども、ウィシュタット伯爵の妾の子供だ。おまけに十歳までは平民の育ちとあって、家族からも世間からも蔑すまれて育った。
言うなれば、アメリはまるで厄介払いをされるように、悪獅子の婚約者を押し付けられ城に行かされているわけである。