獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
消えそうな不安に、駆られている時のことだった。


部屋のドアが、控えめにコツコツとノックされる。


我に返ったアメリは、ベッドに腰かけたまま顔を上げた。


「……はい、どなた?」


「アメリ様、お届け物をお渡ししに参りました」


ドア向こうから聴こえたのは、知っている侍女の声だった。


(贈り物……?)


蝋燭を灯した燭台を手にアメリがドアを開けば、大きな箱を手にしたそばかす顔の若い侍女が、部屋に入って来た。


「重いので、こちらに置きますね」


侍女は、ふらつきながら箱をベッドの脇に置く。


両手でようやく抱えられる大きさの、鼠色の地味な箱だった。


「では、失礼いたします」


「え? あの……」


箱を届けるなりそそくさと去ろうとする侍女を、アメリは慌てて呼び止める。箱の送り主に、全く心当たりがないからだ。


「どなたからですか?」


「とある、殿方からです」


「殿方……?」


「詳しくは、申し上げられません……」


侍女は気まずそうに顔を伏せると、逃げるようにドアの向こうに消えてしまった。







不思議に思いながらも、アメリは箱に手を掛ける。


そして、驚きのあまり言葉を失った。


中から出て来たのが、見るも優雅なドレスだったからだ。
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