獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
―――……


「……ハッ」


一時間後。うつらうつらとしていたアメリは、突如弾かれたようにベッドの上に起き上がった。


「……ハア、ハア……」


心臓の音が、壊れそうなほどに早い。触らなくても、全身にびっしょり汗を掻いているのが分かった。


「ああ、お母様……」


どうにか息を整えたあと、アメリは暗がりで今にも泣きそうな声を出す。





母を囲む名も知らぬ男達。


ぬかるんだ地面に飛び散った、母が精魂込めて仕上げたガラス細工たち。


必至にアメリを守ろうとする、母の声。





やはり、またあの夢を見てしまった。


それに今宵は、いつも以上にリアルだった。まるで、ついこの間の出来事のようだ。


年月とともに体は成長しても、心だけは幼い頃のまま、あの地獄のような情景の中に置き去りにされている。






「誰か……」


助けて、欲しい。


終わらない悪夢と一人闘い続けるアメリに、手を差し伸べて欲しい。


そんな想いで胸の中ははち切れそうだったが、言葉にはしなかった。


声にしてしまえば、自分を保てなくなるからだ。


母のように、強くなりたい――。
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