獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「カイル殿下……?」
アメリが呟けば、カイルが驚いたようにこちらを見る。
カイルは、白のブラウスに濃紺の細身のズボンという軽装だった。夜更けであろうと、腰には銀色の剣が提げられている。
「こんな時間に、何をされているのですか?」
カイルは何かを言いかけ、すぐに口を閉じた。その代わり、
「……お前には関係のないことだ」
返って来たのは、いつもと変わらない冷たい答えだった。
「お前こそ、何をしている?」
「私は、眠れなくて……」
アメリは声のトーンを下げ、俯いた。
「隣に、座ってもよろしいでしょうか?」
「……好きにしろ」
そっぽを向いてはいるが、カイルはアメリを拒まなかった。
アメリは一人分のスペースを開けて、噴水に座るカイルの隣に腰かけた。女神像の足もとから溢れる水の音だけが、闇間に響いている。
アメリの方を見ようともしないカイルの向こうで、薄紫色のライラックの花が夜風に凪いでいた。
不思議だ。
カイルはいつも通りのカイルだし、会話だって弾まない。それでも隣にいることを許してくれただけで、不安で消えそうだった心が癒されていく。
「……私は、満月が苦手なのでございます」
しばらくの沈黙ののち、気づけばアメリは今まで誰にも話したことのないことを口にしていた。
この人も、きっと孤独なのだろうと思ったから。
同情も、理解も求めていない。
ただ、彼にアメリの心の声を伝えたかった。
アメリが呟けば、カイルが驚いたようにこちらを見る。
カイルは、白のブラウスに濃紺の細身のズボンという軽装だった。夜更けであろうと、腰には銀色の剣が提げられている。
「こんな時間に、何をされているのですか?」
カイルは何かを言いかけ、すぐに口を閉じた。その代わり、
「……お前には関係のないことだ」
返って来たのは、いつもと変わらない冷たい答えだった。
「お前こそ、何をしている?」
「私は、眠れなくて……」
アメリは声のトーンを下げ、俯いた。
「隣に、座ってもよろしいでしょうか?」
「……好きにしろ」
そっぽを向いてはいるが、カイルはアメリを拒まなかった。
アメリは一人分のスペースを開けて、噴水に座るカイルの隣に腰かけた。女神像の足もとから溢れる水の音だけが、闇間に響いている。
アメリの方を見ようともしないカイルの向こうで、薄紫色のライラックの花が夜風に凪いでいた。
不思議だ。
カイルはいつも通りのカイルだし、会話だって弾まない。それでも隣にいることを許してくれただけで、不安で消えそうだった心が癒されていく。
「……私は、満月が苦手なのでございます」
しばらくの沈黙ののち、気づけばアメリは今まで誰にも話したことのないことを口にしていた。
この人も、きっと孤独なのだろうと思ったから。
同情も、理解も求めていない。
ただ、彼にアメリの心の声を伝えたかった。