獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「満月が……? なぜだ」
長い間のあと、思いがけず返事が返ってきた。
「幼い頃、満月の夜にとても辛い経験をしたからです。満月の度に私はあの日の出来事を鮮明に思い出し、身が引き裂かれるような想いを繰り返しているのです」
母の悲鳴、飛び散るガラス細工、男たちの蔑んだ眼差し。
あの出来事についてを言葉にしただけで、体の芯から震えが込み上げる。
悔しさと哀しみと絶望がない交ぜになり、いつしかアメリは涙を浮かべていた。
「カイル殿下、お教えください……」
涙に濡れた顔を、アメリはカイルに向けた。
「どうして、お母様はあんなひどい目に遭った挙げ句、死んでしまったのですか? どうして、私は孤独に生きなければならなかったのですか?」
隣にいるのは、いずれはこの国の最高権力者になる人物だ。そのせいか、そんな嘆きが口をついて出ていた。
「お母様も私も、何も悪いことはしていないのに……」
取り乱すアメリを、カイルはじっと見つめていた。涙で滲んだ視界では、彼がどんな表情をしているのかよく分からなかった。
「もう、こんな苦しい想いは誰にもさせたくないのです……」
長い間のあと、思いがけず返事が返ってきた。
「幼い頃、満月の夜にとても辛い経験をしたからです。満月の度に私はあの日の出来事を鮮明に思い出し、身が引き裂かれるような想いを繰り返しているのです」
母の悲鳴、飛び散るガラス細工、男たちの蔑んだ眼差し。
あの出来事についてを言葉にしただけで、体の芯から震えが込み上げる。
悔しさと哀しみと絶望がない交ぜになり、いつしかアメリは涙を浮かべていた。
「カイル殿下、お教えください……」
涙に濡れた顔を、アメリはカイルに向けた。
「どうして、お母様はあんなひどい目に遭った挙げ句、死んでしまったのですか? どうして、私は孤独に生きなければならなかったのですか?」
隣にいるのは、いずれはこの国の最高権力者になる人物だ。そのせいか、そんな嘆きが口をついて出ていた。
「お母様も私も、何も悪いことはしていないのに……」
取り乱すアメリを、カイルはじっと見つめていた。涙で滲んだ視界では、彼がどんな表情をしているのかよく分からなかった。
「もう、こんな苦しい想いは誰にもさせたくないのです……」