獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
翌日のことだった。
王の間の向かいに位置する執務室へ向けて、カイルはツカツカと長い廊下を歩んでいた。隣では、レイモンド司祭が必死になってカイルを阻止しようとしている。
「カイル殿下、お待ちください! 急に顔を出されたら、陛下がお怒りになります!」
「うるさい。黙れ、レイモンド」
「元老院の話し合いは、神聖な場です。部外者が立ち入ることは言語道断だと、何度言ったら分かるのですかっ!」
「大袈裟な、何が神聖な場だ。ただの無能なジジイどもの戯れだろ?」
「なんてはしたないお言葉を……っ!」
青ざめるレイモンド司祭を無視すると、カイルは金の装飾で縁どられた両面開きの扉の前で立ち止まる。
扉の両側に控えていた衛兵がすぐさま駆け寄りカイルを捕えようとしたが、カイルは易々と衛兵たちの鳩尾に肘鉄を食らわすと、床に倒れ込む衛兵とパニックに陥っているレイモンド司祭をそのままに、執務室に強引に足を踏み入れた。
楕円形のテーブルを囲むように座っていた王と、元老院と呼ばれるこの国の最高機関に属する幹部たち五名が、一斉にカイルを振り返る。
誰しもが突然のカイルの登場に不快な表情を浮かべていたが、中でもとりわけ嫌悪感を示していたのはカイルの父であるロイセン王だった。
「カイル。何をしに来た」
落ち着いた物言いで、カイルを威圧する。
カイルはテーブルの前まで歩み寄ると、まるで猛獣でも見るかのように自分の出方を伺っている老人たちを見回した。
「税金を、また飛躍的に上げたという噂を耳にしましたので」
「当然だ。戦には金がかかる。騎士の数を倍にしないと、ハイデル公国との国境すら突破できない現状だからな」
王の間の向かいに位置する執務室へ向けて、カイルはツカツカと長い廊下を歩んでいた。隣では、レイモンド司祭が必死になってカイルを阻止しようとしている。
「カイル殿下、お待ちください! 急に顔を出されたら、陛下がお怒りになります!」
「うるさい。黙れ、レイモンド」
「元老院の話し合いは、神聖な場です。部外者が立ち入ることは言語道断だと、何度言ったら分かるのですかっ!」
「大袈裟な、何が神聖な場だ。ただの無能なジジイどもの戯れだろ?」
「なんてはしたないお言葉を……っ!」
青ざめるレイモンド司祭を無視すると、カイルは金の装飾で縁どられた両面開きの扉の前で立ち止まる。
扉の両側に控えていた衛兵がすぐさま駆け寄りカイルを捕えようとしたが、カイルは易々と衛兵たちの鳩尾に肘鉄を食らわすと、床に倒れ込む衛兵とパニックに陥っているレイモンド司祭をそのままに、執務室に強引に足を踏み入れた。
楕円形のテーブルを囲むように座っていた王と、元老院と呼ばれるこの国の最高機関に属する幹部たち五名が、一斉にカイルを振り返る。
誰しもが突然のカイルの登場に不快な表情を浮かべていたが、中でもとりわけ嫌悪感を示していたのはカイルの父であるロイセン王だった。
「カイル。何をしに来た」
落ち着いた物言いで、カイルを威圧する。
カイルはテーブルの前まで歩み寄ると、まるで猛獣でも見るかのように自分の出方を伺っている老人たちを見回した。
「税金を、また飛躍的に上げたという噂を耳にしましたので」
「当然だ。戦には金がかかる。騎士の数を倍にしないと、ハイデル公国との国境すら突破できない現状だからな」