獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
馬車がロイセン城を離れてからも、アメリは上の空だった。
あのドレスは、カイルからの贈り物だったのだ。
あの悪魔と揶揄される王太子が、アメリを想い、アメリのために、自らデザインを選んで発注したものなのだ。
胸の奥が、たまらなく熱い。舗装の整っていない城下町を行く馬車にガタゴトと揺られながら、アメリは熱に浮かされた四肢を保つのに必死だった。
「アメリ様、大丈夫ですか?」
きっと、別れ際のアレクとの会話を耳にしていたのだろう。物言いたげな眼差しで、ヴァンが問いかけてくる。
頭の中がカイルでいっぱいのアメリは、ヴァンに返事をすることが出来ない。
窓の外には、ロイセン王国の王都リエーヌの街並みが流れていく。
「……馬車を止めて」
気づけば、アメリはそう言っていた。
御者が慌てて手綱を引くと、馬車はちょうど町の中心部である大広場に停車した。
「私は、ここで降りるわ。ヴァン、お屋敷にはあなた一人で戻って」
「……は?」
ヴァンは、冷静沈着な彼らしからぬ頓狂な声を上げる。
「何をふざけたことを言っているのですか?」
「どうせあの家に戻っても、私は皆に迷惑をかけるだけよ。帰らない方がいいわ」
言うや否やアメリは荷物の入った鞄を手繰り寄せ、ドアノブに手を掛ける。
そして、渋い顔で自分を見つめる忠実な騎士に強い眼差しを向けた。
「この町に残って、どうしても確かめたいことがあるの。それをやらなければ、私は一生後悔するわ」
あのドレスは、カイルからの贈り物だったのだ。
あの悪魔と揶揄される王太子が、アメリを想い、アメリのために、自らデザインを選んで発注したものなのだ。
胸の奥が、たまらなく熱い。舗装の整っていない城下町を行く馬車にガタゴトと揺られながら、アメリは熱に浮かされた四肢を保つのに必死だった。
「アメリ様、大丈夫ですか?」
きっと、別れ際のアレクとの会話を耳にしていたのだろう。物言いたげな眼差しで、ヴァンが問いかけてくる。
頭の中がカイルでいっぱいのアメリは、ヴァンに返事をすることが出来ない。
窓の外には、ロイセン王国の王都リエーヌの街並みが流れていく。
「……馬車を止めて」
気づけば、アメリはそう言っていた。
御者が慌てて手綱を引くと、馬車はちょうど町の中心部である大広場に停車した。
「私は、ここで降りるわ。ヴァン、お屋敷にはあなた一人で戻って」
「……は?」
ヴァンは、冷静沈着な彼らしからぬ頓狂な声を上げる。
「何をふざけたことを言っているのですか?」
「どうせあの家に戻っても、私は皆に迷惑をかけるだけよ。帰らない方がいいわ」
言うや否やアメリは荷物の入った鞄を手繰り寄せ、ドアノブに手を掛ける。
そして、渋い顔で自分を見つめる忠実な騎士に強い眼差しを向けた。
「この町に残って、どうしても確かめたいことがあるの。それをやらなければ、私は一生後悔するわ」