獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「……ええ、そうよ」


はっきりと答えられなかったのは、まだ彼の本質に確信が持てないからだろう。


「ふうん。もしかして、あれだけひどいことをされながら、あの男のことが気になるのですか?」


核心をつくヴァンの台詞に、アメリは視線を泳がせた。


「図星か。妬けるな、娘を悪徳商人のもとに嫁に出す父親の心境だ」


ヴァンは、納得出来ないというように自分の顎を擦りながら渋い顔をした。


「でも、俺もあの男には少し興味がありまして」


「……なぜ?」


「先日、悪獅子が暴れたと王の護衛に助けを求められ、執務室まで駆け付けたことがあるのです。その時、とある戦略についてを語るあの男の声を偶然耳にしたのですが……」


その時のことを思い出すように、ヴァンは目を細めた。


「意外にも、聡明な男であることを知ったからです。あの男のことが、嫌いなのには変わりありません。だけど、俺も興味はある。だから、情報収集に喜んで手を貸しますよ、アメリ様」


普段は女を誘うことばかりに専念されているヴァンの笑顔が、いつもにも増して頼もしく思える。


「ありがとう、ヴァン」


アメリが少女のように無邪気に微笑めば、ヴァンはアメリにだけ見せる穏やかな眼差しを見せて、それに答えてくれた。









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