獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「頭を上げよ」


王と思しき人物の声に、アメリは恐る恐る顔を上げた。


玉座には、えんじ色のローブを纏った老人が座っていた。王冠を被り、白いあごひげを生やしている。じっとアメリを見下ろす視線は、冷ややかだった。


王の左隣りには、聖職者の黒服に身を包んだ司祭と思われる人物が立っていた。肩までの銀色の髪を束ねた、眼鏡姿の温厚そうな男だ。胸元では、ロザリオが艶やかな光沢を放っている。年は、おそらく三十代半ばあたりだろう。


そして王の右隣りに視線を移したアメリは、ぎょっとして固まった。


カイル王太子と思われるその人物は、銀色に輝く鉄兜で顔をすっぽり覆っていたからだ。







「アメリ・ウィシュタット。遠渡はるばる、よく来たな」


王の声に、アメリは慌てて姿勢を正す。


「こちらこそお目にかかれて光栄でございます、陛下。この度は譽れ高きご招致をくださり、誠にありがとうございます」


「うむ。固くならなくて良い、楽にしろ」


「恐れ入ります」
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