獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
シルビエ広場に辿り着いたところで、カイルはようやくアメリの腕を離した。
日中は必ず人のいるシルビエ広場だが、今の時間は閑散としていた。暗闇の中、老朽化した大聖堂のシルエットが浮かんでいる。
生温かい、夏の夜だった。空には星が瞬き、小さな噴水の水面には、少し膨らんだ半月がゆらゆらと姿を映している。
カイルは立ち止まると、ようやく後ろを振り返る。夏の匂いのする夜風が、カイルの頭を覆っていたフードを外した。闇間に現れた金糸雀色の髪の美しさに、アメリは今の状況を忘れて見惚れてしまう。
「どうして、また俺の前に現れた? どうして、家に帰っていない?」
苛立った口調で、カイルが聞いてくる。
「……確かめたいことがあったのです」
「確かめたいこととは、なんだ」
「町で度々あなたが乱暴を働く、という噂についてです」
アメリの返事に、切れ長の瞳が一瞬見開かれる。だが、すぐに冷淡な落ち着きを取り戻した。
「……それで、何が分かった?」
「噂は、本当でした。町では、あなたの悪い評判しか聞きませんでした」
フッと、カイルが口もとに嘲笑的な笑みを浮かべる。
「だろうな」
「でも、フィリックス様の良い噂はたくさん聞きました。町の人達は、フィリックス様としてのあなたを、信頼して慕っています」
日中は必ず人のいるシルビエ広場だが、今の時間は閑散としていた。暗闇の中、老朽化した大聖堂のシルエットが浮かんでいる。
生温かい、夏の夜だった。空には星が瞬き、小さな噴水の水面には、少し膨らんだ半月がゆらゆらと姿を映している。
カイルは立ち止まると、ようやく後ろを振り返る。夏の匂いのする夜風が、カイルの頭を覆っていたフードを外した。闇間に現れた金糸雀色の髪の美しさに、アメリは今の状況を忘れて見惚れてしまう。
「どうして、また俺の前に現れた? どうして、家に帰っていない?」
苛立った口調で、カイルが聞いてくる。
「……確かめたいことがあったのです」
「確かめたいこととは、なんだ」
「町で度々あなたが乱暴を働く、という噂についてです」
アメリの返事に、切れ長の瞳が一瞬見開かれる。だが、すぐに冷淡な落ち着きを取り戻した。
「……それで、何が分かった?」
「噂は、本当でした。町では、あなたの悪い評判しか聞きませんでした」
フッと、カイルが口もとに嘲笑的な笑みを浮かべる。
「だろうな」
「でも、フィリックス様の良い噂はたくさん聞きました。町の人達は、フィリックス様としてのあなたを、信頼して慕っています」