世界を変えられないけれど。
 男は、天使を見上げた。




 汚れた 天使の白い手が 男の肩に触れる。


「さあ、おいで。」


 男は、手を伸ばす。




 ねえ、兵士。

 苦しかっただろう。

 恐ろしかっただろう。

 痛かっただろう。

 憎らしかっただろう。


 こんな、堕天使だけれども、おまえにふれる、最後の生き物。

 
 おまえは、幸せか。




 兵士は、こたえる。

「あなたは、この世で一番美しい。」


 そうです、あなたは美しい。

 その白い輝きが
 
 その黒い不浄が

 ただただ、私を、震撼させるのです。







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