能ある狼は牙を隠す
そう言われた時は一体どこへ行くんだろうと少し不安だったけれど、狼谷くんと二人で学校の近くのカフェに入った。
今年できたばかりだから、友達のSNS投稿でよく見かけるお店だ。
前にカナちゃんと帰りに一回だけ寄ったことがある。
自分でトッピングを決められたり、色々カスタマイズできたり。そういう選択肢を与えられると、私は優柔不断だからいつも迷ってしまう。
その時は店員さんがキャラメルフラペチーノがおすすめと教えてくれて、それがすごく美味しかったから狼谷くんにも飲んで欲しかった。
『あま。……でも、ほんとだ。しゅわってするね』
狼谷くんはそう言って肩を揺らした。
甘いのは得意じゃないのかな? 無理させてしまっただろうか。
でも彼が笑ってくれたし、心なしか普段よりも声のトーンが高くて、喜んでくれたのかなと私も嬉しくなった。
せっかくの誕生日なのに私とずっと一緒なのは申し訳ないし、ただカフェでお茶するだけというのも味気ない。せめて何かプレゼントでもあげられたら。
結局、駅内のゲームセンターでクレーンゲームをして、その景品が運良く取れたから狼谷くんにあげることにした。
『何これ。……ヒツジ?』