能ある狼は牙を隠す


一番取りやすかったのが動物のマスコットストラップで、随分と可愛らしいものだった。
最近放映中の子供向けアニメのキャラクターらしい。


『ご、ごめん、いらなかったら捨ててもいいし……狼谷くんにはちょっと、可愛すぎたかも』

『……いや、もらっとくよ。ありがとう』


複雑な表情でお礼を言ってくれた彼に、何だかこっちの方がいたたまれなかった。本当に申し訳ない。

段々一緒にいると分かってきた。
狼谷くんは一人でも平気そうに見えて、寂しがり屋なんじゃないかと。
そして多分、ちょっと人見知りなんじゃないかな。

私とは委員会が同じでたまたま機会があったから、こうして仲良くしてくれるんだと思う。

だから、みんなも彼と関われば普通の人だって分かってくれるはずなんだけど。

そんなことを考えていた頃、思わぬ転機がやって来た。

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