能ある狼は牙を隠す



「白さーん! 勉強教えて!」


模試も来週に控えたある日の昼休み。
カナちゃんとあかりちゃんと三人でいつも通り喋っていたら、九栗さんが突然駆け寄ってきた。


「え、えっと、私じゃ力不足だと思うよ?」

「またまたぁ! 最近休み時間も勉強してて熱心だなって思ってたの。まあ模試は正直どうでも良くて、テストの方がやばいんだけどね」


おちゃらけた様子で声を張る彼女。
どうやら私の言葉を謙遜として受け取ったみたいだ。


「あー……九栗さん、気持ちはすごく分かるんだけど、羊ってほんとに勉強できないから……」


遠慮なく私を論評するカナちゃんに、九栗さんは「えっ」と目を見開く。


「そうなの? 白さん真面目だから、てっきり成績いいのかと……」

「見た目からして優等生だしね、分かるよ……私も一年生の頃そう思ってた……」


と、二人が生暖かい視線をこちらに送ってくる。

分かる、分かるよ……勉強も頑張って人並みだし、スポーツはだめだめだし、一体私に何の取り柄があるんだろうね……。


「あ、九栗さん。もし良かったら、放課後一緒に勉強しない?」

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