能ある狼は牙を隠す
すごく申し訳ないけれど、彼女たちが立ち去るのを待った方が良さそうだ。
それとも引き返して、違う階段から降りようか。
身を潜めながら悩んでいると、女の子が決定的な言葉を言い放った。
「てか私、学校の近くで狼谷くんと白さんが二人で歩いてるとこ見たんだよね」
ど、と嫌な汗が噴き出す。
まさか見られていたなんて。いや、学校のすぐ側だから勿論可能性としては十分ある。
「え〜、委員会とかで帰り被ったんじゃないの?」
「私もそう思ったんだけど、学校の近くのカフェあるじゃん? そこに二人で入っていくの見ちゃった」
しっかり見られてるよ――――!
別にやましいことは何もしていないのに、のたうち回りたくなった。
「それはあれだよ……狼谷くん、絶対白さんのこと財布にしてるでしょ。じゃないとあの二人、一緒にいるわけなくない?」
と、その子の言葉に、私は頭が真っ白になる。
「言い方悪いけど、正直白さんのこと利用してるようにしか見えない……あの子押しに弱そうだし」
「あー……真顔で無茶ぶりしそうだよね、狼谷くんって」