能ある狼は牙を隠す


その会話に、猛烈に悲しくなった。

だからだと思う。


「そんなことないよ」


私は屈んでいた体を真っ直ぐ伸ばして、つい口を挟んでしまった。


「つ、白さん……」

「狼谷くんとは普通の友達だし、利用されてなんかないよ」


まさか本人が現れるとは夢にも思っていなかったんだろう。
彼女たちは口をぱくぱくと動かして、こちらを凝視していた。


「狼谷くんはすごく優しくて、丁寧で、いい人だよ。ちゃんと話せば分かると思う!」


彼が女の子にチヤホヤされるのも、最近は少し分かってしまった気がする。
だってあんなにかっこいい男の子に優しくされたら、誰だって嬉しくなるんじゃないかな。


「だから、怖いなんて言わないで欲しいな。ほんとに、全然、そんなことないから」

「あ、う、うん……ごめんね……」


なぜか怯えるような目で返事をする彼女たちに、私は首を傾げた。
さっきから、二人のどちらともと一回も目が合っていない。


「じゃ、じゃあ私たちはこれで……」

「頑張って!」

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