能ある狼は牙を隠す
桃李成蹊
模試が終わっていよいよテスト期間に突入した。
それが終われば待ちに待った夏休みで、嬉しいけれど最初の一週間は夏期講習がある。
「早くテスト終わんないかなー。今は勉強より部活の方が大事なんだけど」
そう不満を漏らしたのはあかりちゃんだ。
九栗さんも夏休みに試合があるとこの間言っていたから、体育会系の部活は今が一番忙しいんだと思う。
「テニス部、去年強かったよねえ。まあ羊と二人で応援行くから頑張ってよ」
「任せな〜!」
カナちゃんの言葉に、あかりちゃんはぐっと親指を立てた。
うちの高校は野球部がかなり強くて全校応援しに行ったことがあるけれど、普段仲のいい友達の試合となるとまた話は変わってくる。
夏休みの予定を楽しそうに話し合う姿がちらほら見受けられるようになってきて、教室内の空気はどことなく浮かれていた。
「白さん、おはよー!」
「おはよう〜」
はつらつとした声で爽やかな挨拶をくれたのは九栗さんだ。
彼女は「あ、そうだ」と呟くと、ノートを取り出す。
「ちょっと聞きたいことがあって。古文なんだけど、白さん確か国語得意だったよね?」