能ある狼は牙を隠す



「で。テスト終わって浮かれるのは分かるんだが、これからさらに浮かれる話をしようと思う」


森先生の言葉に違わず、テストを終えたばかりの教室は夏休み一色でそわそわと浮き足立っていた。

手応えはというと、頑張った英語と数学はそこそこ大丈夫だったと思う。……思いたい。
他の教科は前日の詰め込みも頑張って、何とか平均点くらいは取れるように持っていったつもりだ。

さすがにテスト直前は狼谷くんの時間を割いてもらうのも申し訳ないから、勉強会はなしにしようという話でまとまって。

でも狼谷くんは、英語と数学のあとの休み時間に毎回「大丈夫?」と聞きにきてくれた。
朝、学校に来てからも「分からないとこある?」と気を遣ってくれるし、あまりにも優しすぎてこれはいい点を取らないと罰が当たりそうだ。

それが原因で、一度あかりちゃんに「付き合ってんの?」ととんでもない質問をされたけれど、きちんと誤解はといておいた。


「今日は修学旅行の班を決めるぞ」


おー! と教室内から歓声が上がる。
高校生活における最大のイベントだから無理もない。


「まあこれに至っては思い出作りだから、堅苦しいことは言わない。基本的に自由に組んでいい。喧嘩はすんなよー」

< 138 / 597 >

この作品をシェア

pagetop